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2011年9月10日 (土)

やはりベネチア・ビエンナーレはおもしろい

ベネチアと言えば、映画祭もあるが、現代美術の祭典「ベネチア・ビエンナーレ」が有名だ。ちょうどこちらに来る前に横浜トリエンナーレを見たこともあり、駆け足で見て回ったが抜群におもしろかった。例年は総合ディレクターのテーマ展が開催されるイタリア館やアルセナーレ(倉庫跡)が見ものだが、今回は国別展示が強いインパクトを残した。

私にとって一番刺激的だったのはスイス館のハーシュホン。大量の使用済み携帯電話やテレビ、雑誌などが積み重なったごみの集積のような会場に、戦争の悲惨な写真が並ぶ。現代文明とはこういうことだったのかと思わず見入ってしまった。

今年は、歴史や記憶をテーマにした展示が多かった。ドイツ館の「恐怖の教会」は、会場を教会にしてさまざまなオブジェや映像を並べる。しばらくいると気が滅入るような重い展示だ。イギリス館は、迷路のような小さな部屋が無数に並ぶ館だ。人が去ったような室内は、まるで人類滅亡の後の風景のようだ。
フランス館はボルタンスキーで、幼児の写真が鉄骨を組んだレールを流れるというもの。これもまた20世紀的な文明を思わせる。

それらに比べると、日本館の束芋の展示はたわいなく見えてしまう。日本の社会や歴史を見せているのだろうが、ほかの館の強烈や歴史や社会意識に満ちた作品の前では、単なる楽しいアニメに見えるだろう。

ビエンナーレ会場ではないが、フォルチューニ宮殿のTRAという展示がおもしろかった。超越性を感じさせるような作品を古今東西から集めたもので、狩野探幽の墨絵や杉本博司の写真、ジェームス・タレルの光の作品など何でもありだ。会場が古い4階建の宮殿で、もともとそこにある家具や絵画なども並んでいるので、見ているとだんだん現実離れして、異世界へトリップしてゆく。

横浜トリエンナーレを見た時、何だかスノッブなだけで小粒な印象しか残らなかったが、ベネチア・ビエンナーレを見て、観客に強いインパクトを与える現代美術がまだまだ存在することを知って嬉しかった。横浜で一番おもしろかったクリスチャン・マークレーは、既に6月からベネチアで展示中だった。こちらでは何日かは予約制で24時間の上映さえやっていた。作品の趣旨からすると、それが本当だろう。


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