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2011年9月22日 (木)

『絶望の国の幸福な若者たち』の小気味よい居直り

古市憲寿という26歳の大学院生が書いた『絶望の国の幸福な若者たち』を読んだ。買った理由は何よりも題名が気になったからだが、上野千鶴子と小熊英二の推薦文が帯にあったこともある。これがなかなか小気味よい居直りぶりで、おもしろかった。

この本は、ニューヨーク・タイムズの東京支局長が著者に「日本の若者はこんなに不幸なのにどうして立ち上がらないのですか」と聞くことから始まる。これに対する答えは「なぜなら、私たちは幸福だからです」。社会学専攻の著者は、若者の幸福度を時代別のアンケートで見せる。確かに現在ほど若者が幸福だと感じている時代はない。

インターネットも携帯もディズニーランドもコンビニもなかった時代に比べたら、「インフラや生活環境といった面では、現在の若者は過去最強の『豊かさ』の中で暮らしている」。「WiiやPSPを買えるくらいの経済状態で、それを一緒に楽しむことができる社会関係資本(つながり)を持っていれば、だいたいの人は幸せなんじゃないか」。

もちろん著者は、今後も幸せだと信じるほど能天気ではない。雇用制度の崩壊と少子高齢化に財政赤字や原発も含めて、「その『幸せ』を支える生活の基盤自体が徐々に腐り始めている」。

それからこの本は明治以降の「若者」の定義を探ったりするが、そこはアカデミックになっておもしろくない。おもしろいはやはり従来の常識を批判するところだ。今の若者は車や海外旅行や酒に金を使わないが、消費離れではなく、生活にかかわるものや通信費など人間関係に関わるものは前よりお金をかけていることをデータで示す。それ以前に、若者の数が圧倒的に減っていることも。

「内向き」批判に対しても、身近な仲間を大事にしている姿勢という。「大学卒業後、一つの企業だけで働き、出世レースに明け暮れて、趣味と言えばゴルフとマージャンくらいしか知らない『おじさん』のほうが、僕からみればよっぽど『内向き』に見える」。
著者はもはや「日本」という魔法はとけたとし、「『日本』がなくなっても、かつて『日本』だった国に生きる人々が幸せなのだとしたら、何が問題なのだろう」。

もともと、最近の若者が何を考えているのかわからない、という思いは長年あった。その疑問がちょっと解けた感じではある。いろいろ反論はあるが、この著者と議論したら、言い負かされそうな気がする。今の若者がわからないと嘆くおじさん、おばさんは必読。

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