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2011年9月12日 (月)

ベネチア国際映画祭の結果に驚く

ベネチアの受賞結果には心底驚いた。どう見ても受賞はないだろうと思っていた『ヒミズ』の主演の2人に、マストロヤンニ賞が贈られたからだ。私の印象だけでなく、上映翌日のイタリアやフランスの新聞にはほとんど触れられていなかったし、受賞式当日の各紙朝刊でも全く予想に入っていなかった。

上映翌日に触れていた数少ない新聞が伊「コリエーレ・デラ・セーラ」紙だったが、「現実とファンタジーの往復は、結局おもしろいというより退屈」と批判的だった。去年の『13人の刺客』や『ノルウェーの森』が各紙で取り上げられていたのとは大違いだ。

受賞後の新聞をネットで見ても、『ヒミズ』についてはほとんど触れられていない。伊「レプブリカ」紙には、「まじめで誠実な批評家さえ理解するのに苦労した1本」という表現があった。同紙には今回の結果でポランスキー、クルーニー、フリードキンが漏れたのに、中国、香港、日本、ロシア、ギリシャに賞が行ったことを「東洋偏重」と皮肉った。イタリアから見たら、ギリシャもロシアも東洋なのだ。

マストロヤンニ賞自体が、イタリア人に何とか賞を出さないとうるさいために最近作ったようなものなので重要性は低いが、公式な賞であることは間違いない。金賞のソクーロフ作品や銀賞の『人山人海』(製作が許可されず、今回はサプライズ上映)にしても、「困難な状況下にある映画製作を助ける」ような人道的な姿勢が、『ヒミズ』の予想を覆す評価につながったのではないかと思う。

仏『ルモンド』紙は、審査員特別賞の「動かぬ大地」と第一回作品賞の「向こう」La-baの2本の映画やオルミの新作に触れながら、今年のイタリア映画は明らかにアフリカ人の不法入国がテーマだったと書いていた。これは私がここに書いた感想と同じだ。それにしても日本の新聞各紙は「動かぬ大地」をどうして「テッラフェルマ」と書くのだろうか。それでは何のことかわからないし、これはあきらかに同じシチリアで撮影したヴィスコンティの『揺れる大地』La terra tremaを意識した題名なのに。そういえば不法移民をテーマにしたこの映画の受賞も、明らかに「人道的」姿勢を示す。

映画祭の賞なんて、いつも「えーっ」と言わせるためのようなものなのでどうでもいいが、塚本晋也の「オリゾンティ賞」も含めて日本映画が受賞したのは、快挙であることは間違いない。

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