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2011年9月11日 (日)

9月のパリで見るカンヌ出品作

毎年、8月末から9月にかけて、パリではカンヌに出た映画が公開される。今回何本か見た。最初に見たのがミア・ハンセン=ラヴの「若き日の恋」Un amour de jeunesse。前作『あの夏の子供たち』が強く印象に残った、20代の女性監督だ。

今回は、前作で中年男の自殺を描いたような、大仕掛けはない。同世代の恋人を愛し過ぎた15歳の少女の、その後の8年間を描いたものだ。最初は二人がいかに愛し合っていたかを見せる。しかし少年は、恋人よりも自分の将来を切り開くことに関心が向かい、外国に行く。最初は少女は苦しむが、建築に興味を持ち始め、大学で学ぶ。そしてそこで教える建築家と同居し始める。そこへかつての恋人が現れる。

物語はたわいないが、とにかく主人公の女性がいい。特に彼女が少年と南仏でバカンスを過ごしたり、建築家とコペンハーゲンを歩いたりする時の、夏の光を浴びた表情が最高だ。あるいは恋人と再会して夜のパリを歩く時に遠くで見えるいくつもの光。光に包まれた人々を描いたら、これほどいとおしい場面を作れる監督は、あまりいないだろう。ちょっと地味な作品だが、日本で公開したら、きっと若い女性の圧倒的な支持を得ると思うのだが。

もう1本はナンニ・モレッティ監督の「法王決定」Habemus Papam。日本でG社が買ったという話は聞いていたが、フランスで公開したばかりで新聞や雑誌で話題になっていたので、思わず見に行った。法王が亡くなって、新しい法王が選ばれるコンクラーベが行われ、新法王がバチカンに集まる群衆の前で挨拶するまでを内側から描いたもの。ちょっと『英国王のスピーチ』にも設定が似ているが、こちらは選ばれたミシェル・ピコリ演じる新法王が、挨拶を怖がって逃げ回るというもの。

前代未明の混乱を外に出さないように、何とか早く挨拶させようと右往左往する枢機卿たちの姿は本当におかしいが、注目すべきは、こっそり街に出てしまう法王と急に雇われた精神科医(監督本人が演じる)の二人だ。法王は街の中でさまざまな人々を見て次第に人間性を取り戻してゆき、一方で精神科医は次々とバチカンの偽善を暴き、ユーモアで見せる。その挙句には世界から集まった枢機卿たちに地域別のバレーボールさえさせてしまう。

戻った法王が群衆の前で摩訶不思議なスピーチをしたところで、映画はぷつんと終わる。その前の劇場にバチカンの人々が詰めかけるシーンも含めて、一瞬不可解で、狐につままれたような最後は、いかにもモレッティらしい。規則に縛られた人々の日常をちょっとずらして、勇気ある行動を取る法王や精神科医の姿は、監督そのものだろう。今回は前作の「カイマーノ」のような表面だった政府批判はなかったが、彼らしさは健在だ。モレッティの元妻の精神科医役を演じるマルガレータ・ブイもピリリと効いた味を出していた。

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