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2011年10月29日 (土)

おもしろくてためになる『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』

最近、『絶望の国の幸福な若者たち』という卓抜な若者論を描いた26歳の古市憲寿と上野千鶴子の対談『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』を読んだ。副題に「僕らの介護不安に答えてください」とあって、老人介護の話が具体的に書かれていて役に立つし、それ以上に2人の世代論がおもしろい。

「親は子供に釣った魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなくてはならない」という坂東眞理子の名言を引く上野に対して、古市が「団塊の世代には教えられる釣り方ってあるんですかね」と反論する。そして上野は「団塊世代は、上げ潮の時に努力せずに釣り船に乗れた人たち。当時はもう釣り船どころか、入れ食いの釣堀状態よね。だけどその子供たちが釣堀に来た時には、もう魚は払底していた」と分析する。上野の例えのうまさは抜群だ。

私はこの2人の世代の中間にいるが、1980年代半ばでも、就職は「入れ食いの釣堀状態」だった気がする。私は当時一番かっこよく見えた西武百貨店に内定をもらったが(結局行かなかった)、10月1日の内定者説明会に500人いて、「あと300人取る」と言っていたのを思い出す。その会で「証券なら、野村でも日興でも今からでも内定もらえるよ、あっちが給料いいよ」と言っていた学生もいた。

介護保険の仕組みについても、詳細に説明してあるので役に立つ。例えば足が弱って買物に行けなくなったら、「要支援」で介護保険がもらえる。「要支援」には2段階あり、「要介護」には5段階あり、段階ごとに利用料の月の上限が決まっている。一番重度の要介護5で上限は36万円。本人負担は1割。身体介護は1時間で4020円なので、排泄介助、入浴など頼んでも400円払えばいい。知らなかった。

施設は、まず特養ホームは希望者が多くて入れない。介護保険ができてから有料老人ホームができたが、これはこちらはピンキリで、高いからいいとも限らない。最近増えたのが、高齢者専用賃貸住宅、いわゆる高賃専、あるいはケアハウスで、老人ホームは厚労省の担当だが、高賃宣は国交省の管轄。こちらに入居する初期費用は中間で300万円くらいで、有料老人ホームに比べると1ケタ違うし、賃貸だから退去時には返してくれる。こんなことも知らなかった。

後半は今後の日本はどうなるかがテーマになる。上野は虐げられてきた女性と、仕事のない若者が手を結んで現在の男中心の資本主義社会を変えていくしかないと言う。つまり終身雇用制をなくし、労働市場の流動化を図れば、女性と若者が職を得やすくなり、それが出生率の減少を防ぐことにもつながるという。シングルマザー支援なども重要という。

とにかくおもしろくてためになるので、読んでみてください。

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