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2011年11月27日 (日)

どこへ行くのか東京フィルメックス:その(3)

またまた東京フィルメックスらしい映画を見た。イランのジャファル・パナヒとモジタバ・ミルタマスブ共同監督『これは映画ではない』。今年のカンヌで発表され、ベネチアでも上映された話題作だ。

なぜ話題作かと言えば、これが去年の3月に投獄されたパナヒの最新作だからだ。パナヒと言えば、『チャドルに生きる』とか、『オフサイド・ガールズ』とか国際映画祭の常連だ。彼の逮捕は大きな国際的反響を呼び、去年のカンヌは敢えて審査員に招へいしたり、有名監督たちが集まって声明を出したりした。

その後いったん解放されて、懲役6ヶ月、20年間の映画制作及び海外渡航禁止の判決が出る。この映画は、その後控訴して、上訴審の判決を待っている間の日常を撮ったものだ。

若い友人のミルタマスブがカメラを持ってきて、彼の朝食のシーンを撮る。プロデューサーや弁護士との会話。その後彼は、許可が下りなかった新作の話を始める。絨毯の上に、テープを張って、嬉しそうに演出プランを話し始める。

その後突然「映画を撮らないのに脚本の話をしてもしょうがない」と叫んで、屋上のベランダに出る。植木鉢にいくつもの花が咲くベランダから悲しそうに外を見る。友人がカメラを残して帰った後は、アイフォンでアパートの管理人を撮っているが、思い立ってカメラを持って管理人とエレベーターに乗る。「撮ってもいいのか」と思っていると、地下から外がほんの少し見えたところで映画は終わる。この緊張感。

映画の終わりには「イランの監督たちへ感謝」と書きながら名前はすべて〇〇〇と伏せられている。こんな映画をどのようにしてカンヌに持ち出したのだろうか。映画祭関係者かプロデューサーが相当の危険を冒したのではないか。

冒頭にフィルメックスらしい映画と書いたが、本来なら東京国際映画祭でやるべき作品だ。国際的なアピールに堂々と連帯すべきだった。いつも思うが、東京国際映画祭には、この種の国際的センスが決定的に欠けている。

補足:そういえばパナヒが見るテレビに東北の地震のシーンがあった。船が流されてゆくシーンに彼が「あーっ」と声を挙げる。その後に日本語のテロップが見えて、これが東北のことだとわかった。しかしパナヒはすぐに地元のニュースに番組を変える。自国の状況の方が大変だと思ったのかどうかはわからないが。いずれにしてもこの映画が今年の3月半ばに撮られたことはわかる。

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