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2011年11月10日 (木)

設定だけは秀逸の小説『東京ロンダリング』

原田ひ香の『東京ロンダリング』を読んだ。どこかの書評で、死んだ人の部屋に住むのが仕事の女性という設定を読んで、興味を持ったからだ。本屋で手に取ったら著者の写真がずいぶん美人だったこともある。

とにかく設定が秀逸だ。変死したり自殺したりした人の後の部屋は借りる人がいない。持ち主は借り手にそのことを言う義務があるからだ。そこで、不動産屋は特定の人物にお金を払って、その部屋に一か月住ませる。するとまっさらな物件として貸し出すことができるらしい。

この小説の主人公の女性は、浮気がもとで離婚させられて、この住まいの「ロンダリング」の仕事を引き受ける。そして築45年の木賃アパートから丸の内のタワーマンションまで、一か月おきに引っ越してゆく。

出だしはおもしろかった。不動産屋は言う。「東京は狭くて不動産は限られてる。しかも、人がやたら死ぬ。変死した人間がいる部屋が使えなくなったら、だれも住めなくなってしまう。あんたたちがやってることは人助けなんだよ。いや、東京助けなんだな」。

ところがその後、そのアナーキーな調子は失速する。谷中の古いアパートに住んだ主人公は、通いだした定食屋の跡継ぎに好かれて、そこでバイトを始めたり、別れた夫の父親が現れて離婚は実は夫が仕組んだものだと告白したり。なんだか普通の平凡な物語があちこちで始める。しまいには、超高級マンションに住んで騙された同業の菅さんを救おうと頑張るという通俗的な展開に至るところで、小説はプツンと終わる。

それにしても設定はおもしろい。本当に一か月おきにいろいろなところに住んでお金をもらえたらいいだろうな、と思ってしまう。実際にはない仕事だろうけれども。

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