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2011年11月16日 (水)

フランスにおける映画デジタル化

仏『カイエ・デュ・シネマ』誌の最新号は、「さらば35㎜ デジタル革命は終わった」という題で、映画のデジタル化に伴う諸問題を特集している。驚いたのは、日本で現在話題となっている映画館のデジタル化よりも、デジタル化に伴う映画美学的な問題や、保存の問題を主として扱っている点だ。

映画館のデジタル化については、2010年9月の法律で、50スクリーンを持たない独立系の1500スクリーンについて、国立映画センターが自治体と協力してデジタル化の費用を貸し付け、配給会社が最初の2週間について映画館の取り分を多くするシステムができたらしい。それ以外のチェーンの3500スクリーンについては、自前なりVPF会社(一種のリース)の力を借りて、デジタル化を進めているという。

この特集で問題となっているのは、35㎜で撮った映画をデジタル化する時に、色調などに大きな違いができていることだ。あるいはデジタルで撮るにしても、新しいデジタルカメラが各社でどんどん開発されている現状で、最新の機械にすべて精通している撮影監督は1人もいないということだ。つまり映画の美学的な側面が問題なのだ。

35㎜のプリント代は900ユーロかかるが、DCP(デジタル・シネマ・パッケージ=ハリウッド基準)制作代は1本120ユーロ(これにKDM、つまりデジタル鍵代が12-15ユーロ)ですむ。しかし35㎜をDCPにデジタル化するには1500ユーロかかる。小さな配給会社はこれを払うのが大変だ。そしてシネコンの場合にVPFを払い、アート系に2週間の収入を払うと、むしろ高くつくという。10年後にデジタル化の借金がすべて消えて、配給会社にとってようやく20-30%安くなるだけではないかという。

映画の保存に関しては、現在フランスの法律はデジタルで作られた映画については、デジタル素材と35㎜の両方を国に納品する義務があるという。デジタルでの保存は、100年の実績を持つフィルムに比べて確実とは言えないからだ。フィルムの法的納品制度もない日本では考えられない世界だ。

また映画の権利保持者に対して、国立映画センターは2010年にデジタル化のための資金貸し出し制度を設けたという。こうして過去の名作はデジタル化され、映画館にもかかるようになる。35㎜の古典はもはや映画館では見られなくなりそうな日本の現状とは大きく異なる。

デジタル化のさまざまな問題を指摘しているが、日本人にとっては「ぜいたくな悩み」にしか見えない。

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