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2011年11月24日 (木)

どこへ行くのか東京フィルメックス:その(2)

昨日も東京フィルメックスならではの2本を見た。1本はニコラス・レイの妻が作ったドキュメンタリー『あまり期待するな』で、もう1本は中国映画『ミスター・ツリー』。

『あまり期待するな』は今年のベネチアで初上映されたもので、アメリカ映画でもないのだから別に東京国際映画祭でやってもおかしくはないが、ニコラス・レイのドキュメンタリーという「シネフィル」度が、フィルメックスらしい。映画は『ウィ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン』という、かつて誰もが困惑したレイの晩年の珍品を撮った頃をめぐるものだ。

1970年代前半に大学に招聘されて、学生に映画を教え始めるレイ。教えるというよりは、共同生活をしながら、一緒に撮るという感じで、あの時代のヒッピー的雰囲気が充満している。映画を撮ることは生きることだ、俳優ごとに演出は違う、などと主張するレイは限りなくかっこいい。撮っているのはほとんど実験映画で、学生はレイに心酔し、ついてゆく。大半はそのドキュメント映像と大人になった当時の学生の語りだが、ジム・ジャームッシュとビクトル・エリセへの貴重なインタビューも入っている。エリセのスペイン語の声が聞こえ始めた時は、震えてしまった。

私には、別なところでこたえた。人生の終わりに学生と一緒になって過ごしている毎日は、私の日常でもあるからだ。もちろん自分をレイに比べるなんてとんでもないが、学生をそそのかして騒いでいる様子は他人事ではなかった。

『ミスター・ツリー』は、ジャ・ジャンクー監督の助監督を務めたハン・ジェ監督の作品という点で、フィルメックスらしい。映画はジャ・ジャンクーの驚異的な時空には遠く及ばないが、やるせない雰囲気を漂わせた主人公の「無能の人」ぶりは何ともいい。こんな不潔な役立たずの男が昔の日本にはたくさんいたが、と思った。

監督のQ&Aを聞いたら、この主人公は80年代に西洋にかぶれた兄と、90年代の資本主義に影響を受けた弟の中間で、ぶらぶらしている存在だという。まさか時代の産物とは思わなかった。日本だと70年代の「しらけ世代」が近いか。主人公を演じた俳優はそういう感じの男を探してきたのかと思ったが、すべて演技だというから驚いた。

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