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2011年11月14日 (月)

3つ星の抱一展

「ミシュランガイド」の3つ星の説明に、「そのために旅行する価値のある」という表現があるが、最終日に駆け込んだ千葉市美術館の「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展は、まさにその表現がピッタリ。この美術館は遠い。東西線を西船橋で総武線に乗り換えて、千葉駅まで1時間余り。それからさらに15分歩く。

前にも行ったはずなのに、途中のラブホテル街で迷った。少し遠回りをして、ようやく旧銀行の壮麗な建物を使った中央区役所にたどり着く。この7、8階が美術館だ。

最初は姫路酒井家の叔父や兄の作品から始まる。そして抱一の若い頃の浮世絵や狂歌本の挿絵。37歳で出家してから、尾形光琳の花鳥風月に近づいてゆく。とにかく小品がたくさんある。

大作は、光琳百回忌を祝った後から始まる。《四季花鳥図屏風》には、惚れ惚れした。一枚の中に四季の移り変わりを表し、それぞれの季節を鮮烈な色彩とほとんど抽象的な空間配置に収める。特に緑と白の強さ。有名な《風神雷神図屏風》はつくづくカリカチュアのような、才気煥発の絵だと思った。そしてもちろん《夏秋草図屏風》は、その構図の冴えといい、青い水や白い花、赤い葉などの色彩配分といい、抱一の知性と感覚の頂点だ。

その後にあった《十二ヶ月花鳥図》も楽しかった。季節が少しずつ移り変わり、植物のどこかに鳥や虫が潜んでいる。《月に秋草図屏風》の黒い月にも驚いた。

抱一を継ぐ画家の中では、やはり鈴木其一が一番おもしろい。《風神雷神図襖》は二つの神の間の不思議な空間構成において、宗達、光琳、抱一と伝わった伝統を軽々と越えている。そして《芒野図屏風》の幻想性。この自由さは抱一にはない。

そのほか江戸琳派の作品をたくさん見た。全部で338点で、展示替えで見られなかったものもあるので、300点弱を見ただろうか。抱一作品も含めて初公開も何点かあった。学芸員の相当の力業である。

あえて文句を言うと、照明がよくない。最近のサントリー美術館などの最新式の照明に慣れたせいか、蛍光灯が中心の照明は興醒めだ。もう一つ、カタログは書籍形式にしているので、判型が小さいうえに値段が2800円と高い。屏風絵を観音開きにするような工夫もないので、絵が小さい。展覧会は最高だったので残念だ。前期も見たかった。4月に京都の細見美術館に巡回。京都にも行こうかな。

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