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2011年12月 5日 (月)

本当のことを言おうか:映画館デジタル化

「本当のことを言おうか」というフレーズは、谷川俊太郎の詩にあったと思うが、今後時々この言葉を鍵にして文章を書きたい。先日、映画館のデジタル化をめぐるシンポに参加した。このブログがきっかけでお誘いがかかったようだ。本番は事前に主催者から方向を決められていたので、自由に発言できなかった。

映画館のデジタル化は歴史の必然だ。ところがこれにはお金がかかる。そこでハリウッドはファイナンスの発想からVPF(仮想プリント代)というシステムを考案し、その費用の大半を配給会社に負担させるシステムを考え出した。

ところがこれだと小さな映画館や配給会社は困る。そこで騒ぎ始めたのが今回の集会だ。確かに地方都市でVPFを導入したら、配給会社は映画を上映できなくなるだろう。

解決法は、VPFに代わるシステムを作ることだが、これはアップリンクのように廉価な仕組みを広めるか、公的機関の補助しかない。個人的には地方自治体が映画の多様性のために映画館のデジタル化を支援するのが、一番実現しそうだと思う。本当なら日本のメーカーが小規模な上映向けの安価なシステムを開発し、それに公的助成があれば理想的だ。ミニシアターだけなら数は少ないが、今後ホールなどの公的機関を考えれば相当のマーケットがあるのではないか。

実はこれで解決のつかない問題は3つある。1つはデジタル映像の保存。もう1つはかつて35㎜で作られた作品の上映、そして最後は本当に今の観客は多様性を求めているか、ということだ。

1つ目。今のところ、デジタル素材を完全な状態で保存しているところはない。フランスなどはデジタルで作られた映画は、35㎜プリントを同時に国に治めるという法律を最近作った。35㎜にはとりあえず100年以上もったという実績がある。埼玉にあるNHKアーカイヴズを訪ねたことがある。1本の番組に16㎜、1インチ、3/4インチ、D2、HDなどのテープがあった。新しいメディアが現れるごとに数年おきに変換するので、そのたびに10億円以上かかるという。そして結局は16㎜の情報量にかなわない、と言っていた。完全なデジタルサーバーによる保存ができたら別だが(そんなものは世界のどこでも実現していない)、35㎜に変換する方が安上がりだろう。この費用は国が持つしかない。

2つ目は、これまでの作品をどうするか。このままだと35㎜の映写機はどんどんなくなるだろう。映画会社やフィルムセンターに35㎜が保存されても、同センター以外で上映はできなくなる。これも国が補助金を出してどんどんデジタル化すべきだと思う。そうすれば、ミニシアターのみならず、ホールや学校、病院などいろいろな場所で上映が可能になるだろう。「映画の多様性」と言う時には、古い映画を含むことを忘れてならない。デジタル化は、多様な上映の場を生み出す可能性を秘めている。

3つ目の問題は最も重要で長くなるので、後日書く。

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