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2011年12月15日 (木)

スコセッシの新境地:その(1)

3月9日公開のマーチン・スコセッシ監督新作『ヒューゴの不思議な発明』を見て、その新境地に驚いた。まず暴力がどこにもない、少年と少女のファンタジーであること、次に3Dの新たな可能性を見せていること、もう一つはジョルジュ・メリエスを始めとする映画誕生初期を忠実に再現していることである。

スコセッシと言えば、『タクシー・ドライバー』から最近の『ギャング・オブ・ニューヨーク』や『シャッターアイランド』まで、暴力やマフィアなど、社会の暗部を描いてきた監督だ。ところが今度は、1930年代のパリを舞台に、少年ヒューゴが亡き父の形見を追いながら、映画のパイオニア、ジョルジュ・メリエス(ベン・キングズレー)に出会うという、何とも楽しい話だ。

ヒューゴは、パリの駅の時計台に住む。時計職人だった父が亡くなってからは、駅のいくつかの時計を一人で動かしている。父の形見の自動人形を修理するのが夢だが、その過程で駅構内の不思議なおもちゃ屋の老人と出会う。ヒューゴはその養女と仲良くなって、その老人が実は映画誕生時に『月世界旅行』などで一世を風靡したジョルジュ・メリエスだということを知る。

時計台の中に住んで駅構内を縦横に動き回るという、『オペラ座の怪人』のような設定がファンタジーそのものだし、ヒューゴが見出すメリエスの世界は、もちろん元祖SFだ。トリックを多用した彼の映画が何本も挿入されるし、傑作『妖精たちの王国』の撮影シーンなどは、こうだったのかと心躍る。何だかスコセッシではなく、スピルバーグみたいだ。

そして3Dが実によくできている。冒頭、パリが上空から写り、カメラは降下して駅に向かい、列車のホームから時計台への中へ突入する。ルネ・クレールの『パリの屋根の下』を思わせるシーンだが、この映画では駅構内を始めとして、かつての「古き良きパリ」が3Dで生き生きと再現されている。駅の埃や煙や湯気まで一つ一つ浮き上がって見えて、見ていて飽きない。時計台の中の複雑な歯車の動きや少年と警官との追っかけも迫力満点だ。最近は『一命』や『ピナ』など3Dの必然性が薄い作品を何本も見たので、パリの実写とセットとCGを巧みに組み合わせた今回の3Dの新しさには目を瞠った。

メリエスを始めとした、映画誕生初期の再現の例外的正確さについては、後日書く。

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