イザベラ・ロッセリーニのおばさんぶりを楽しむ
2月に公開されるジュリー・ガブラス監督の『最高の人生をあなたに』の試写を見た。この監督の前作『すべてフィデルのせい』に新しい才能を感じたし、宣伝担当の方に「私が好きそうな映画」と言われたからだ。
映画としてのできは、『すべてフィデルのせい』が上回っているが、この映画には確かに「私が好きそうな」要素がたくさんあった。
テーマ的に言えば、中年夫婦の倦怠があり、初老の時期の困惑がある。冒頭でイザベラ・ロッセリーニ演じる妻は、夫の勲章の授与式をうわの空で聞いており、翌朝自分の家で起きて「このホテルはひどいわね」とボケをかます。
ウィリアム・ハート演じる夫は、過去の栄光に生きる建築家。所属する建築事務所がお金の儲かる老人ホームを手掛けようとするのを断って、若手スタッフとコンペに挑もうとする。妻は認知症への恐怖から、水泳やボランティアに取り組もうとし、うまくいかない。二人は次第に不仲になるが、子供たちは何とかよりを戻させようとする。
テーマも展開も平凡だが、物忘れとか、過去の栄光とか、個人的には身の覚えのあるエピソードが続く。最近は大学生に囲まれて毎日を過ごしているので、以前に増して日々「老い」を感じるし。
そうした個人的感慨を超えてこの映画が魅力的なのは、夫婦を演じるイザベラ・ロッセリーニとウィリアム・ハートの存在感だ。それぞれ『ブルーベルベット』(86)と『蜘蛛女のキス』(85)あたりが頂点で、最近はちょっと忘れられた感じが、映画の内容とダブって見える。とりわけ『ブルーベルベット』のセクシーな姿からは想像できないおばさんぶりを見せる、イザベラ・ロッセリーニが強烈だ。
いかにもダサい水着を着てプールに現れたり、裁判所をドタドタとみっともなく歩いたり。老いて太った自分の醜さを、あえて隠さず自然に見せる。そんな中で時おりはっとするような美しい表情がかいま見える。とりわけあの大きな瞳。母親のバーグマンも60歳を過ぎて『秋のソナタ』(78)に出ているが、あくまで女優然としていてこんな自然さはなかった。
私はおばさん好きなのかもしれない。
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