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2012年1月16日 (月)

韓国映画らしいとは

ナチスへ向かうドイツ国民の心性を表現主義映画に読み取ったクラカウアーではないが、映画はつくづく時代や国民性を表わすと思う。最近の韓国映画といえば、ロマンチック、ダサい、やり過ぎ、くどい、でもおもしろいといった印象があるが、先日映画館で見た『哀しき獣』はまさにその通りだった。

主人公グナムは中国の朝鮮族で、借金のために韓国での殺人を請け負う。実は同時に出稼ぎをしている妻に会う目的もあった。殺人を果たそうとするとそこには別に殺し屋がいて、というところから話はもつれにもつれる。殺し屋を手配した社長テウォン、グナムを送り込んだ密入国業者ミョン、それから警察までからまって、カーチェイスと殺し合いを続ける。

たぶん100台以上車を壊すカーチェイスはすさまじいし、それ以上に3つか4つのチームがもつれあい、殺し合う殺戮のシーンには言葉をなくしてしまう。なぜかピストルではなく、手斧や刀を持って大声で殺し合い、血しぶきが舞う。残酷そのものだが、どこかゲーム的だ。

グナムを始めとして登場人物たちの顔がいい。まさにハードボイルドにふさわしい、ジャンル映画的な顔をしている。昔の日本のテレビの刑事ものなどにいた顔だ。ミュンなどはどこか滑稽で、その不死身ぶりに見ていて笑いが起こることも。

ジャンル映画らしく、リアリティよりもアクションを楽しむ作りだが、『ミッション:インポッシブル』との違いは、その奥に主人公の悲しい運命が流れていることだ。朝鮮族という、(日本人にはあまり理解できないが)悲劇的な出自、出稼ぎに行ってしまった妻への思いなどが、中国、韓国、北朝鮮という東アジアの歴史を背景に迫ってくる。だから主人公グナムの哀しい表情に共感してしまう。

映画は終わりそうで終わらず、最後の最後までロマンチックな仕掛けを見せる。ナ・ホンジン監督はこれが二作目と言うが、前作『チェイサー』も見たくなった。
いまや香港、台湾、韓国など、東アジア独特のノワール映画は、映画史の大きなジャンルになったと思う。

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