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2012年1月21日 (土)

またまたビジネス書を読む

またビジネス書の類を読んでしまった。佐野眞一著『あんぽん 孫正義伝』。『週刊ポスト』の連載時から気になっていたので、単行本になってすぐ買った。佐野眞一は、正力松太郎を描いた『巨怪伝』や中内功の『カリスマ』からファンになった。

孫正義はファンではないが、気になっていた。まず自分と高校が同じだし(向こうは中退してアメリカに行った)、韓国籍だし、それ以上に怪しげなビジネスをしているように見えたのに、いつのまにかIT界の覇者となった軌跡を知りたいと思った。

佐野の本がおもしろいのは、そのルーツを辿ってどこまでも出かけていくことである。『東電OL殺人事件』では容疑者ゴビンダの足跡を追って、ネパールまで行っていた。今回も孫家を父方、母方と三代先まで遡り、二度も韓国に行く。そこで親戚に話を聞く。

孫の生まれた佐賀や、母の出身地の福岡は何度も行って、数えきれないほどの親戚に会う。日本の国籍を取得した人もそうでない人もいるが、みんな熱く語る。どれもおもしろいが抜群なのは、父親の三憲だ。正義にホークスを買えと言ったのは自分だと言い、自分の妻を「くそばばあ」呼ばわりする。

自分の母親についてこう話す。「ブタの子に自分のおっぱいば飲ましよるわけですよ。…おっぱいがこげん大きかとですよ。もう余って余ってしょうがないわけです」。韓国をけなし、「だいたい騎馬民族の末裔っちゅうのは、全部山賊なんです。それをいま、実行しよっとが北」と言い放つ。ほぼ私が話していた方言だけに、ゾクッとする。

孫は中学くらいから並外れていた。鳥栖の「朝鮮部落のウンコ臭い水が溢れる掘っ立て小屋の中で、膝まで水に浸かりながら必死で勉強していた」という。アメリカに行くと決めたのは、韓国籍では東大を出ても出世できないとわかったから。それからは、会社を作ることを目的にアメリカで学び。佐野は、UCバークレー校の恩師にまで会いに行き、孫の強い意志を確認する。孫はアメリカで妻と出会い、結婚後親戚の反対を押し切って「孫」と改名する。「在日韓国人であろうが、日本人と同じだけの正義感があって、能力がある。それを自分が事業で成功して、証明しなきゃならないと思ったんです」。

孫の日本名は「安本」だった。それが「あんぽん」と読まれて、「あんぽんたん」と言われるのが嫌だったこともあって改名した。本書は敢えてそれを題名にしている。そのほかにも、驚くべき事実が満載だ。戦後日本史、とりわけ在日韓国人の底辺から見た歴史のうねりが浮かび上がる。

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