ビジネス本2冊
日頃金儲けと関係のない仕事をしているせいか、時々ビジネスの本が読みたくなる。最近読んだのは『ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録』と立石泰則著『さよなら!僕らのソニー』。いずれも日本の高度成長期から昨今の低迷までを克明に描いている点がおもしろかった。
『ザ・ラストバンカー』は、三井住友銀行頭取や日本郵政社長をやった西川善文氏の自伝だ。口をへの字に結んだちょっと偉そうなこの人の顔はよく新聞やテレビに出ていたので、覚えている人も多いだろう。この本の「はじめに」で、「現代は未曽有の危機の時代だと言われることが多いが、…実は日本はずっと危機の時代にいたのだ」と書かれていたので、興味が湧いた。
前半は退屈だ。おもしろくなるのは不良債権処理や銀行合併が始まる中盤だ。安宅産業の処理に始まってイトマン事件や三井との銀行合併、そして小泉・竹中による郵政改革など、それまでの銀行の業務を超えた仕事をこなしていった跡を、隠さず淡々と書く。いつどこの社長から頼まれたとか、大臣の要請はこうだったといったことをすべて吐き出している感じだ。
竹中から郵政公社社長を頼まれた時に、妻に相談すると言って持ち帰る。妻に「郵政といったら選挙のテーマになったほどで、政治家や官僚を相手に、政治音痴のお父さんができるえわけないじゃないですか」と反対されるが、「総理自ら、どうしても、とおっしゃってくださっているのだから」と引き受けるくだりもおかしい。結果として妻の予想通り、「かんぽの宿」問題と、東京中央郵便局の再開発問題で、鳩山邦夫総務大臣のパフォーマンスに利用され、あえなく去ってゆく。
この本を貫くのは、その時の悔しさだろう。ビジネスマンは、政治家やマスコミと違って発言する場を持たない。「あとがき」に書く。「私は悪者とされることが多かった」。「ビジネスはドライで合理的なものである。…ではなぜビジネスの現場における合理性を、合理的でなく根拠なき情緒で批判するのだろうか。そのような態度が誠実でないことは、当のマスコミを含めた誰の目にも明らかであろうと思う」。「だから私利私欲など全くないし、私心もない。老夫婦が年金だけで食べていける以上の財産もない。現在、七三歳。自分の痩身な体格を顧みると、よくぞここまで体力がもったものだと思う」。
関係者が読めば、政治家やマスコミも含めて、「それは違う」と言いたい人も多いような気がする。そんな一本調子の回顧録だ。『さよなら!僕らのソニー』については後日書く。
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