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2012年1月17日 (火)

ビジネス本2冊:『さよなら!僕らのソニー』

先日書き損ねたもう一つのビジネス本、立石泰則著『さよなら!僕らのソニー』について書く。これはビジネス本というよりは、ある種の戦後論、言い方を変えると世代論だ。著者は1950年生まれ。私より一回り上のこの世代までは、SONYというブランドが大きな意味を持っていたようだ。

「就職するまでの私にとって、ソニー製品は憧れであり、厳密な意味でいつもクォリティを確かめて買っていたわけではなかった。なにしろオーディオ関係は、ソニー製品しか買わなくなっていたため、他社製品と比較することがなくなっていたからだ」。就職しても、上司から取材用の録音機はソニーにしろと言われる。「ソニーならあきらめがつくだろうが。一番品質がいいソニーで故障したのだから、仕方がないと」と上司は言う。

こんなソニーへの憧れは、私には全くない。あまり音楽に関心がなかったせいもあるが、ウォークマンが流行った時は、値段の安い他社製を買った記憶がある。パソコンが一般的になってからは、ソニーのVAIOはデザイン重視で壊れやすいという評判だった。私の中ではシャープやパナソニックの方が技術力が上のイメージだ。

確かにソニーは、トランジスタラジオに始まって、テープレコーダー、トリニトロン・カラーテレビ、ベータマックス(これはVHSとの戦いに敗れた)、ベータカム、ウォークマン、8ミリビデオ、そしてプレイステーションと、戦後日本の革新的な技術開発を担ってきた。

これは、それが現在のハワード・ストリンガー会長兼社長(最近会長に専任)によって、ズタズタにされたことを惜しむ本だ。ストリンガーは、家電製品に関心がなく、エンタテインメント・ビジネスやネットワーク・ビジネスに力を注いでいる。そのために腹心のスタッフを米国から連れてきて役員にしており、この本を読んでいると、現在のソニーは完全にアメリカ人に支配されているような印象を受ける。いまだに米国に住むストリンガーの給料は、何と8億6千万円。月に一度日本に来るために、ホテルのスイートルームを年間契約している。

そしてソニーの優秀な技術者たちは、サムソンに引き抜かれるなどして、どんどん逃げ出しているという。確かにやってられないだろう。

「たしかなことは、かつてソニーのFMラジオから流れる高品質な音色に感激し、トリニトロン・カラーテレビの映像の美しさに驚嘆し、ウォークマンにときめいたようなことは、もう二度と起こらないということである」。これは完全な恨む節だ。

個人的には、もう「技術立国」はやめてもいいのじゃないかと思うのだが。

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