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2012年1月24日 (火)

若者に人気の国芳展

六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで2月12日まで開催中の「没後150年 歌川国芳展」を見に行って驚いた。例の52階行きのエレベーターに乗ろうとしたら、「30分から35分待ちです」と言われたからだ。確かに日曜の3時過ぎだが、まさか混むとは思っていなかった。

通常だとこれで帰るが、その日はなぜか「まあいいか」という気分で、並ぶことにした。並んでみてさらに驚いた。客の多くが若者で、カップルが多かったからだ。もともと美術展の客層は中高年の女性と決まっているが(最近はアート系の映画館の客層もこれに近づいている)、そこには大学生や20代、30代が多かった。

フジテレビが爆笑問題を使ったスポットを大量に打った「ダリ展」は、こんな客層だった。しかし今回は浮世絵の展覧会だし、主催の表記を見ても「日本経済新聞社」だけで、テレビ局の名前はない。主催に関係なくどこかのテレビで特集をしたのだろうか。とにかくこの層は、テレビの観客以外ありえない。

バカップルを含む年下の人々に取り囲まれて待つこと30分。ようやく会場にいると、作品にへばりつくような列がぎっしりとできていた。もちろん浮世絵はダリの絵画のように大きくない。従って遠くからは見ることはできない。私は列が切れたところを探して見ることにして、おおかた10点に1点くらいをじっくりと見ることができた。

確かにその表現は派手で楽しい。大きな骸骨や鯨や鯉と戦う侍を描く武者絵がある。あるいは歌舞伎を描く役者絵は、歌舞伎以上に誇張した表現で豪華絢爛だ。犬や猫などの動物が人間の真似をしたり、人間の顔が数人の体の組み合わせでできていたりする戯画も、見れば見るほど味が出てくる。

それらを見ていると、19世紀の爛熟した享楽的な江戸文化というか、文化文政から天保の改革を経て幕末へ向かう時代の人々の快楽主義的な生き方が伝わってくる。明治になってこうした部分は長い間抑圧されたが、20世紀後半から再び日本で広がっているのではないか。カップルで楽しそうに話しながら1点、1点を見ている若者たちを見ながら、そんなことを考えた。

森アーツセンターギャラリーというのは、上の階の森美術館と違って、完全な貸し会場だ。おおむね新聞社やテレビが借りて、大量動員の展覧会をやる。今世紀になって国立新美術館と共に六本木に大きな貸し会場が2つもできたおかげで、竹橋の国立近代美術館や上野の国立西洋美術館の特別展が地味で渋いものになった気がする。

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