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2012年1月18日 (水)

『アーティスト』は作戦勝ちでは

去年のカンヌで話題になり、ゴールデン・グローブ賞を3部門で受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督『アーティスト』を見た。友人の新聞記者も絶賛していたので早く見たかった。結果は、おもしろかったが、何だか作戦勝ちの映画のような気もした。

現代では異例の白黒サイレント映画だが、音楽はふんだんに流れる。それも往年の映画音楽を取り混ぜたような、ノスタルジックなものばかり。語られるのは、映画がトーキーになって落ちぶれてゆくサイレントのスター男優ジョージ・バレンティンと、トーキーになってスターの階段を駆け上がる若手女優ペピー・ミラーとの恋。

俳優のしぐさや小道具や犬に至るまで凝りに凝っている。現代の観客を飽きさせないように、小さなエピソードがふんだんに登場する。一つ一つのセリフ(字幕で出てくる)の気が利いている。例えば、端役でデビューしたペピーの口元にジョージは「女優を目指すなら特徴がいる」とマジックで黒い点をつける。このほくろがその後の彼女のシンボルとなる。トーキー後の最初のヒット作は『つけぼくろ』。

それにしても、過去の栄光を求める男を現代に生きる女が救おうとするお定まりの展開が、涙を誘う。特に私のような中年男にはたまらない。そして酒におぼれ、フィルムに火をつけて火事になる。最後にもう一回復活のシーンを入れているのもうまい。

映画の中の声に2度驚く。1度目はトーキーが始まってペピーが歌いだした時。2度目はラストでジョージがトーキーに出た時に、急にプロデューサーの「パーフェクト」「もう1回」という声が響く。映画の中の声がいかに快いか、あえて感じさせる仕掛けだ。

実はこの映画を見る直前に、再度スコッセッシの『ヒューゴの不思議な発明』を見た。どちらの映画も映画史がテーマで、ともに主人公は破産して映画フィルムに火をつける。映画のデジタル化の真っ最中に、この2本がアカデミー賞の候補になるとは、何という偶然だろうか。あるいは偶然ではないのかもしれない。

『アーティスト』は4月7日、『ヒューゴの不思議な発明』は3月1日(に変更)公開。

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