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2012年2月25日 (土)

実はおもしろい「文化庁メディア芸術祭」

騙されたと思って見て欲しい。六本木の国立新美術館で3月4日まで開催中の「文化庁メディア芸術祭」のことだ。入場無料。このタイトルからして何だか「親方日の丸クールジャパン」みたいで避けているあなたは、間違っている。

今年で15回目を迎えるらしいが、実はきちんと見たのは今回が初めて。かつては東京都写真美術館でやっていて、国立新美術館ができてから移ってきた。これまでに何度かのぞいて、気にはなっていた。公募形式で今年は2714点の応募があったというが、よく見るとしりあがり寿とか佐藤雅彦とか有名作家の作品も交じっている。

全体は「アート」「エンタテインメント」「アニメーション」「マンガ」の4部門に分かれる。「マンガ」はあまりこういう展示に向いていると思えないし、「エンタテインメント」はゲームが中心で、どちらにしても私が全くくわしくない分野なので、「アート」と「アニメ」を中心に見た。

まず会場に入ると「アート」部門。「Particles」という大きな光のインスタレーションに驚く。よく見ると光の造形が変化してゆくのがおもしろい。その次の大賞の「Que voz feio」は白黒の端正な2つの画面に、双子の日系人の中年女性の語りを別々に移す。この2点はどちらかというと、古いタイプかもしれない。

私としてはスペースシャトル事故の衝撃をアニメで表現した「The saddest Day of My Youth」の悲しさや、新幹線からの車窓の風景に人の形のアニメを加えた「HIMATSUBUSHI」の日本的日常性、地方都市の寂れた風景に演歌を加えた「BIND DRIVE」の不穏な感じなどに強く惹かれた。

最も衝撃を受けたのが、「関東各地の環境放射能水準の可視化:micro sievert」という展示。今現在の福島や茨城や千葉や東京の放射能の量が、雨が降っているような画面に可視化されている。これは作品ではなくて、科学的な表示だが、妙に美しい。これを見ると、明らかに福島の放射能は茨城より多く、茨城は東京より多いのがわかる。東京―NY間の飛行機の放射能は福島よりずっと多いのも驚きだ。これは同じものがネットで見られる。

「アニメ」部門はもうすぐ劇場公開する沖浦啓之の「ももへの手紙」や、山村浩二の「マイブリッジの糸」などベテランの作品もある。個人的には雨の降る廃墟を少女が歩く「レインタウン」が心に残った。

最近見た「恵比寿映像祭」に比べて、何という充実度だろうか。本気で応募してきた作品を、原研也や押井守などのプロの審査員が選んだ展示は、公務員学芸員の趣味的選択とは比較にならないのは当然だが。

こんなにおもしろいものは、ぜひ東京国際映画祭期間中に森美術館でやったらどうだろうか。国際的なインパクトは強いと思うのだが。

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