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2012年3月29日 (木)

気の滅入る本2冊

気の滅入る本を2冊続けて読んだ。菅原出著『民間軍事会社の内幕』と佐藤あつ子著『昭 田中角栄と生きた女』。気が滅入る理由は全く別だ。

『民間軍事会社の内幕』は、今週末に公開のケン・ローチの新作『ルート・アイリッシュ』を見て、イラクに民間企業が派遣する契約兵(コントラクター)が大勢いることを知ったからだ。これまで新聞やテレビではあまり触れていないので、この本を読んだ。

内容はこちらの期待通りなので良かったのだが、気が滅入ったのは、とんでもない数の民間軍事会社PMC=Private Military Companyが米国や英国にあって、さまざまな政府と何十億円や何百億円の金額で契約をしている事実を知ったからだ。要人やジャーナリストの警備、メディア対策、正規軍の世話まで何でもやっている。

雇われているのは特殊部隊や軍隊にいた者たちを中心に、最近は給料が安くて済むフィリピンやフィジーなどの出身者が米国のPMCと契約をしている。「死の商人」と言う言葉があるが、PMCはまさにそれで、戦争の隙間を縫ってビジネスをする。これらの会社は途上国政府との契約も受ける。これは止まらない。

『昭』は、田中角栄を支え、越山会の女王と呼ばれた佐藤昭を、その娘が描いた本だ。田中角栄を描いた部分は実におもしろかったが、気が滅入るのは佐藤昭の晩年の寂しい姿とその娘の無茶苦茶な生き方だ。あれだけ強烈な人間のそばにいると、周りはおかしくなるのが当然かもしれない。

田中角栄の金庫番であり、愛人でもあった佐藤昭に送った手紙は、彼女の死後、金庫から見つかった。これは昨年『文芸春秋』に発表されたものだが、2人の濃密な関係が出ていてすごい。昭が角栄に対して相当強い立場にあったことがよくわかる。そのうえ、ひらがなが多かったり漢字に間違いがあったりして、愛すべき文章だ。

金庫には娘宛に海外から送った絵葉書もあった。1974年に総理大臣としてASEAN5ヶ国を訪問し、各国から1枚ずつハガキを送っている。そのマメさ。娘が「ジュリーのサインが欲しい」というと、どこからともなく、色紙がやってくる。角栄の事務所で「算数がわからない」と言うと、昭はそばにいた青年をつかまえて「この人、すごく頭がいいから、教えてもらいなさい」と言って、鳩山邦夫を紹介する。24歳の時、喫茶店をやりたいと言えば、ポンと金を用意してもらう。それではおかしくなるのが当たり前だ。この本には彼女と角栄や母が写った写真がこれでもかと載っていて、これも痛い。

田中角栄には神楽坂の芸者、辻和子という愛人もいて、彼女が書いた『熱情 田中角栄をとりこにした芸者』という本があった。こちらは素直に感動した記憶があるのだが。

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