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2012年3月12日 (月)

「わからない映画」考:『裏切りのサーカス』

「わからない」映画には、いくつかの種類がある。4月21日に公開される『裏切りのサーカス』は、オーソドックスなわからない映画で、英国の諜報機関がソ連との二重スパイを探すという設定だ。当然、スパイが誰かわからないまま物語が進行する。

おびただしい数の諜報部員が出てくる。ジョン・ハート、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファースなど見知った顔も多いが、どれも一癖ありそうな面構えばかりだ。それぞれの肩書や役割が明示されないまま、現れては消え、死んだはずの男が生きていたり、見ていてどんどん混乱してゆく。

実は試写状に「表の文章を読んでいないと混乱する」という意味のことが書かれてあったので、しっかり読んで行ったし、いただいたプレス資料にも目を通していたが、それでも途中から追いかけるのが難しくなった。誰かに感情移入するようにもできていないし、さまざまな場所に伏線がありそうでなさそうで、注意を持続するのが難しかった。

それぞれの場面はきちんと撮られているし、アクションに頼らない緻密な構成もいいのだが、どこか欲求不満が残った。後でプレスをよく読んで、ああ、そういうことかとわかった点がいくつもあった。それらを知った上でもう一度見るとおもしろいような気がする。

そういえば、最近DVDで見直したロバート・アルドリッチの『キッスで殺せ』(1955)もわからない映画だった。スパイものではないが、同じようにノワールな世界を描き、敵味方がわからない。冒頭から路上を裸足で走る謎の女が現れ、私立探偵が車に乗せる。その女は殺されるが、探偵には次々に敵が襲ってくる。この映画の場合、わざとわからなく作っていることが途中から見ていてわかるので、わからないこと自体を楽しむことができた。こんな芸だと楽しめるが、わかるべきものがわからない映画はちょっとまどろっこしい。

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