« 地味なコレクション展三つ | トップページ | トルコのパスタ »

2012年3月 1日 (木)

今度のウディ・アレンは?

ウディ・アレンは別格だ。1960年代半ばからほぼ毎年監督(多くは主演も)作品を作り、そのほとんどが日本で公開されている。そしてこれが一番大事なことだが、はずれが少ない。こんな監督はクリント・イーストウッドくらいか。5月26日に公開される新作『ミッドナイト・イン・パリ』が、アカデミー賞で脚本賞を取ったと聞いて見に行った。

実を言うと、これは昨秋にプラハから帰る飛行機で見ていた。その時の印象は、かなりおかしいけれどこの監督にしては脚本が甘い、というものだった。しかし飛行機の中で半分目をつむったような状態で見た印象は怪しい。それも脚本賞を取ったし。

結論から言うと、飛行機で見た印象は変わらなかった。物語自体が、主人公のアメリカ青年がパリで毎夜真夜中に夢を見るという内容で、今から思うと飛行機にぴったりだった。最近の作品では、『それでも恋するバルセロナ』のようなスペイン的な恋愛の怖さや、『人生万歳!』のニューヨーカーたちの、人を食ったバカバカしさのような強烈さはなかった。

それでもおかしかった。何と言っても、ヘミングウェイやフィッツジェラルド、ピカソ、マティス、ダリ(エイドリアン・ブロディが抜群)、マン・レイ、ブニュエルなどがどんどん出てくるのだから。現代のアメリカ人がパリに行って真夜中に彷徨っているうちに、1920年代に紛れ込むという設定だが、誰もがその顔を知っているような有名人を実際に演じさせるような、そんな酔狂なことを企てる監督は今どきいないだろう。

そして出てくる有名人がかなり似ている。ピカソやダリもそうだし、マン・レイなどは本人が作った映画に出てくる姿そっくりだ。ブニュエルもいい感じで、後年彼が作る『皆殺しの天使』のアイデアを、主人公がほのめかしたりと、映画好きのアレンらしく、芸も細かい。

アレンはそれでも物足りないと思ったのか、主人公の青年はそこで会ったピカソの愛人、アドリアーナ(マリオン・コティヤール)に連れられて、1890年代に行く。そこにはキャバレーでロートレックがデッサンをしているし、そこにゴーギャンとドガが現れるのだから、とんでもない。

夢の世界の恥知らずなくらいのユーモアに比べると、現実の世界の青年と婚約者やその両親たちのドラマは、いささか単調かもしれない。終わり方もひねりがなくて、ちょっと残念。でも、やっぱりウディ・アレンはおもしろい。1本前の"You will meet a tall dark stranger"は秋に公開というから、こちらも楽しみ。

|

« 地味なコレクション展三つ | トップページ | トルコのパスタ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/54111913

この記事へのトラックバック一覧です: 今度のウディ・アレンは?:

» 映画:ミッドナイト・イン・パリ Midnight In Paris 好調ウディ・アレンが再現する1920年代のパリ。 [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
最近「それでも恋するバルセロナ」「Whatever Works」(邦題忘れた)と、好調な作品が続いているウディ・アレン。 今回もまた評判が良く、アカデミー賞に4部門もノミネーション。 (作品賞/監督賞/脚本賞/美術賞) という中、さっそく。 環境は英語で(字幕は中国...... [続きを読む]

受信: 2012年3月 3日 (土) 00時35分

« 地味なコレクション展三つ | トップページ | トルコのパスタ »