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2012年3月28日 (水)

秘密のない『エル・ブリの秘密』と日本のスペイン・バル

10年ほど前から「スペイン・バル」と称する店が日本中で流行っている。「エル・ブリ」というバルセロナ郊外の料理店が、革命的な料理で有名になったことと関係あるのかわからないが、どうも気になって映画館に見に行ったのが、『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』。

映画としてのできはよくない。どのようにして一つ一つの料理を開発し、実際に本番で調理し、客が食べるかという過程がきちんと描かれていないので、見ていて不満がたまる。「秘密」なんてどこにもない。

それでもおもしろいのは、シェフのアドリア・フェランの仕事ぶりだ。開発は若いシェフに任せる。フェランはひたすら試食する。映画は半年間休業してのバルセロナでのリサーチと、半年間の開店中の厨房を点描のように見せる。開店中も厨房にあるテーブルで、フェランはひたすら試食する。しばらく考えて、「もっとオイルを」とか「これは抜群だ」とか判断する。

柚子、松茸、柿、みかん、しょうゆ、しゃぶしゃぶといった日本やアジアの食材や料理が頻繁に出てくるのも興味深い。いろいろな味を組み合わせ、その相性を判断し、30から40の一口料理の順番を決める。その探究心は、日本の気の利いた居酒屋で、板前が独特の工夫で出す料理に近いと思った。その対極が伝統的なフランス料理。一皿に肉か魚を中心に野菜を添えて、ドーンと出す。これだけでお腹一杯。

その意味では東京のスペイン・バルも、エル・ブリ的な創意工夫の一口料理が多い。私の好きな神楽坂の「エル・プルポ」の殻つきウニプリンも、白魚のニンニクあえも、たぶんスペインにはないだろうが、抜群にうまい。

ちなみに私がスペインで行った何軒かのバルでは、ろくなものを食べた記憶がない。地元の人が友人と一杯飲みながらだべるためなので、オリーヴの実とか生トマトとか、簡単なツマミしかない。「スペイン・バル」は明らかに日本の産物だ。

そういえば、5年ほど前にアドリア・フェランに会ったことがある。スペイン大使館のパーティで紹介されたら、何と向こうから名刺を出してきた。ずいぶん気さくな人で、その様子は『エル・ブリの秘密』でもうかがえる。

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