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2012年3月 5日 (月)

『ヒューゴの不思議な発明』のパンフ問題

マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』は、アカデミー賞を5部門受賞し、無事先日公開されて入りもいいと聞く。今まで書かなかったが、その劇場パンフをめぐって個人的に大変な目にあったので、一応顛末を書いておく。

『ヒューゴ』は、1930年前後のパリを舞台に、忘れられた大監督ジョルジュ・メリエスを少年と少女が再発見する物語だ。当然ながら、劇場パンフでは代表作『月世界旅行』を始めとして、メリエスについての詳細な解説が求められる。ところが現在販売されているパンフには、メリエスに関する記述は皆無に等しい。

実は私は、パンフにこの映画とメリエスの関係について6400字で書いてくれと東宝ステラから依頼され、丸2日かけて書いた。アメリカのメジャー作品のパンフに書くのは初めてなので知らなかったが、原稿はすべて英訳し、アメリカ本社の許可を得るという。私の文章も翻訳されて東宝国際部経由で、米パラマウントに送られたが、先方から私の原稿をボツにし、スコセッシ監督やメリエスを演じたベン・キングズレーがメリエスに触れた部分も削除するようにと指示が出た。メリエス家には本編の許可は得ているが、商品化の許可は得ていないというのが理由だ。

懇意にしているパリのメリエス家にメールを書くと、彼らはグッズはともかく、パンフについては何ら問題がないという。東宝ステラにそのことを訴えると、日本側から許可を取っていいか聞いてみるといいう返事だったが、結局時間切れに。

昨日、日比谷の有楽座でこの作品をもう一度見て、600円のパンフを買った。私の文章はともかく、プレスにはあったスコセッシのメリエスへの思い入れや、映画で撮影シーンを再現した『妖精たちの王国』を選んだ理由などすべてなくなっている。ベン・キングズレーがメリエスの役作りを語る文章もない。メリエス本人の顔写真や作品写真、略歴もすべて削られている。もちろん映画で引用された数多くのメリエス作品やそのほかの無声映画についての解説も、全くない。プレスよりも内容の薄いパンフなんて聞いたことがない。

この映画は、スコセッシの映画のパイオニアたちへの強い思い入れからできている。無声映画のおもしろさ、豊かさを伝えることが彼の目的の一つだったはずだ。しかし、日本のパンフレットはその貴重な機会を生かせない内容になった。米パラマウントと東宝の事なかれ主義のために。私は監督来日のイベントを手伝ったので、直接スコセッシに話そうと思ったが、その機会はなかった。

宙に浮いた私の原稿だが、アサヒコムのWEBRONZAで拾ってもらった。2回に分かれていて、後半が今日の昼頃にはアップされる予定。一部有料なのが残念だが、パンフに必要な情報が込められているはず。

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コメント

貴記事を、 朝日デジタルを購読していますので、 そちらのほうで読ませていただきました。
興味深い記事で、パンフレットに掲載されなかったことは、本当に残念でした。

ただ、ひとつ、気になったのは、
「機械人形はロベール ウーダンの手になるもの」というところです。
メリエスさんにとってはそうなのかもしれませんが、

この機械人形は、フィラデルフィアのフランクリンインスティチュートに今も残っています。

http://www.fi.edu/learn/sci-tech/automaton/automaton.php?cts=instrumentation

博物館の方でも、「原作者が、このオートマトンに、喚起され、この作品が生まれた、」というところで、原作者が訪れたこともサイトに載っています。

実際に、フィラデルフィアで、この人形を見ていまして、映画の中の人形や、人形の書くサインも、酷似しております。
是非、一度ご覧になってください。

投稿: かりふらわ | 2012年3月 8日 (木) 20時09分

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久々に映画観てきました。 【あらすじ】1930年代のパリ。駅の時計台にひそかに住む孤児の少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)の唯一の友達は、亡き父が残した機械人形だった。壊れたままの人形の秘密を探る過程で、彼は不思議な少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)とジョルジュ(ベン・キングズレー)に出会う。やがてヒューゴは、機械人形にはそれぞれの人生ばかりか、世界の運命すらも変化させてしまう秘密があることに気付き……。 駅の壁の穴。入り組んだ迷路みたいなところを少年・ヒューゴが駆け抜けて... [続きを読む]

受信: 2012年3月10日 (土) 02時28分

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受信: 2012年3月15日 (木) 07時59分

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