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2012年4月14日 (土)

フランス映画のレトロ趣味

アカデミー賞を制した『アーティスト』は言うに及ばず、最近のフランス映画では明らかにレトロ趣味が流行っているようだ。最近だと『プチ・ニコラ』とか『幸せはシャンソニア劇場から』とか。この夏に公開される『屋根裏部屋のマリアたち』もその1本。

舞台は1962年のパリ。代々の株式仲買人のブルジョア、ジャン=ルイ(ファブリス・ルキーニ)の家で、親の代からいたメイドが妻とソリが合わずに辞めてしまい、若いスペイン女性のマリアがやってくる。

これは主人のメイドとマリアの話かと思ったら、映画はむしろマリアの属するパリのスペイン人メイドたちを楽しく描く。彼女たちは女中部屋と言われる、シャワーもない6階に住んで、いろいろな家のメイドをやっている。妻に別の女性との浮気を疑われたジャン=ルイは、家を出て同じ建物の6階に住みつく。その居心地のいいこと。

ジャン=ルイがスペイン女性たちに次第に気に入られてゆく過程が楽しい。女たちが田舎に行くというので、彼が車を用意してみんなでピクニックに行くシーンなどは見ていて幸せになる。大きなスペインオムレツは本当においしそうだ。スペイン女性たちの即興のようなおおらかな演技が、この映画の一番の見どころだろう。アルモドバルの映画でおなじみのカルメン・マウラやロラ・ドゥエニュアスが抜群だ。

ジャン=ルイを演じるファブリス・ルキーニは、『しあわせの雨傘』でもそうだったが、いい奴だがちょっと抜けたブルジョアを演じるとすばらしい。顔を見るだけでおかしくなる。天性の喜劇役者だろう。しかし、彼を含めて妻や子供などのブルジョア社会の描写はちょっと平板かもしれない。ジャン=ルイは6階に移って「本当に幸せだ」と言うが、もう一つリアリティが伝わらない。

ブルジョア家庭にはどこにもメイドがいた、古き良き時代。もちろんそれはアルジェリア戦争が終わった頃の大変な時代のはずだが、映画はあくまでノスタルジックに語る。フランスで220万人を動員したというから、今のフランスはこういう映画を求めているのだろう。

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