日本の食をめぐる2冊
グルメを巡るシリーズをWEBRONZAに書きはじめたので、にわか勉強とばかりに2冊の文庫を読んだ。原田信男著『日本人は何を食べてきたか』と宮崎正勝著『知っておきたい「食」の日本史』。
2冊を読んで一番驚いたのは、古代の日本人は北海道と沖縄を除いて、シカとイノシシが主なタンパク源だったことだ。つまり狩猟、牧畜社会だった。それが、平安時代あたりから仏教の影響もあって、農耕社会へと変化してゆく。
そうして魚介の採取も発達し、鎌倉時代以降は茶を飲むことが始まって、茶懐石が完成する。今の日本料理は江戸初期に完成した茶懐石を基本としている。安定した時代が長かった江戸時代は、外食が盛んになる。そば、ウナギ、すし、おでん、天ぷらなどが屋台で気楽に食べられるようになる。
「幕の内弁当」も江戸時代にできたようだ。これは歌舞伎見物のために売り出された。今も歌舞伎を見て弁当を食べると懐かしい感じになるのは、そういうことなんだと思う。
そのほか2冊には、どの食材がいつから日本に来たということが詳細に描かれている。味噌は平安時代で、味噌汁の普及は室町時代に茶懐石が普及してから。醤油は鎌倉時代。醤油が伝わって魚を生で食べる刺身が広まる。日本に砂糖を伝えたのは鑑真。みんな中国からやってきた。江戸時代に琉球のサトウキビから砂糖を作るようになる。
我々が「日本古来の食事」と思っているものが、実は近世以降に輸入品をもとにできたと考えると、「日本的」なるものの概念が大きく揺らいでゆく。
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