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2012年4月10日 (火)

ボストン美術館の日本美術

桜満開の上野公園に、東京国立博物館で開催中の「ボストン美術館 日本美術の至宝」展を見に行った。土曜の昼ごろだったこともあり、上野駅は改札を出るのに数分かかるほど混んでいたが、展覧会はそれに比べるとさほどでもなかった。

いわゆる「○○美術館展」なので、テーマも何もない。アメリカのボストン美術館にある日本美術を平安時代から江戸時代まで、芸もなく並べているだけで、その数70点。とはいえ、大作も多いし、全体に見応えがある。会場の東京国立博物館所蔵の国宝にも匹敵するような作品が、ゴロゴロある。

例えば2つの絵巻《吉備大臣入唐絵巻》と《平治物語絵巻》。《吉備》は奈良時代に唐へ渡った吉備を冒険譚風に描く。これがユーモラスでおかしい。唐の宮殿前で待ちくたびれて眠り込む従者や試験問題を盗み聞く吉備の表情や動作といったら。極めつけは、吉備が名人との碁の大局で碁石を呑み込んで勝ってしまうところ。それにしてもこれほど権謀術策を使う必要があるほど、唐というのは日本にとって強大な謎の権力だったのだろう。

《平治物語絵巻》はずっと写実的だ。展示されているのは「三条殿夜討絵巻」で、駆けつける聴衆や、上皇を拉致する何十人もの武士など、群衆を一人一人細かに描き分けているのが見ごたえがある。《吉備》が描かれたのが平安時代なのに比べて、こちらは百年ほど後の鎌倉時代。かくも筆致が異なるかと思う。

高畑勲さんがどこかに書いているように、一枚の横長の絵の中で巻をめくると物語が進行する絵巻はアニメの原点で、見ていると映画を見ているような気分になってくる。

そのほか、快慶の《弥勒菩薩立像》とか、いくつもの興味深い山水画などもあったが、最後の曽我蕭白の10点を越す展示には圧倒された。表現はマンガチックで、思い切り省略したり、誇張したり。自由自在な画風で何度見ても飽きない。

ボストン美術館には10万点以上の日本美術があるという。その多くが明治期にフェノロサとビゲローが日本で購入して、持ち込んだものだ。今考えると、その意味は限りなく大きい。

会場にあったチラシを見るだけでも、この春はこの「ボストン美術館展」のほかに、「大英博物館古代エジプト展」「マウリッツハイス美術館展」「ベルリン国立美術館展」「大エルミタージュ美術館展」など、マスコミ主催のお引越し展が多い。コンセプトもなく、巨額のギャラを払って借りてくる安易な展覧会はちょっとうんざりだが。

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