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2012年4月28日 (土)

新聞社は展覧会をやめよう

ずっと前から思っていたが、なかなか正面から書けないことがあった。それを今回、朝日新聞デジタルのWEBRONZAに思い切って書いた。「『○○美術館展』はいらない」という文章だ(後半有料)。わかる人にはすぐに何のことかわかるだろう。

「○○美術館展」とは、海外の美術館に新聞社などのマスコミの事業部が億単位の借用料を払ってやる展覧会のことだ。今は朝日が「ボストン美術館展」を東京国立博物館で、日テレが「大エルミタージュ美術館展」を国立新美術館展で開催中だ。6月以降、「マウリッツハイス美術館展」や「大英博物館古代エジプト展」「メトロポリタン美術館展」「リヒテンシュタイン美術館展」など続く。

その多くはコンセプトも何もない展覧会だ。マスコミは多額の借料を取り戻すために自社メディアを使って宣伝するため、どの展覧会も混んでいて作品もよく見えないことが多い。マスコミと国立や都の美術館が組んで、およそ非文化的な状況を作りだしている。豊かになるのは、巨額の借料を改築費に回す外国の美術館のみ。

美術関係者なら誰でもわかっていることだが、誰も口に出さない。新聞記者は自分の会社がやっていることだからもちろん書けないし、美術館も日頃新聞社に助けてもらっているし、新聞社との共催だと観客も増えるので、文句は言わない。大学の先生も、「監修」すれば新聞社のお金で海外に行けたりするので、何も言わない。

私自身がそうした展覧会に携わってきたし、それ以前に新聞社から給料をもらってきたので、表立っては言えなかった。だけど、今は新聞社も美術界も関係ない。最近、前にも増して安易な「〇〇美術館展」が増えているのは間違いないので、思い切って書くことにした。

なぜ朝日のメディアに書いたかというと(よく載せてくれたものだ)、実は一番読んでほしいのは、朝日の経営幹部だから。現場の人間はみんなおかしいと思っているが、止められない。むしろ会社の経営が傾いているので、手間をかけた展覧会ではなく、簡単にお金で借りてきて、大量に宣伝する大型展をやるように強いられている。でも文化事業部自体をなくすすことが一番の経営改革であり、新聞をまともにすることにつながることを知ってほしかった。もちろんそれは、美術館を良くするきっかけになる。

どんな仕事でも、「こんなことやっていたらだめなんだけど」という部分はあるだろうけど、マスコミの展覧会は極点に達している。

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コメント

いつも、拝見させております。自分以外の視点での映画評を読むのは、とても参考になります。

さて、新聞社主催の展覧会の件ですが、仰るとおりで、所謂「○○美術館展」にはコンセプトがないな、と感じることも多いですね。なんというかか一括借りして適当に副題付けして、一丁あがりみたいな、やっつけ仕事みたいな気もします。
でも、実物を観る機会が限られている、私は、メインの1・2点を観れるだけでも、ラッキーなんて、思えてしまいます。ミーハーだからでしょうか?
映画一本1800円(一般的な値段)と比較すると、時間のわりに入館料も高い気もしますが。作品を観ると思えば仕方ない気もします(ついでに、常設展も見れるし)。この不況の中、美術館経営も厳しいでしょうし、我々も現地に行かずとも本物が見られる機会を作ってもらえる点はメリットとして認識してあげてももいいように思えますが。

ごめんなさい、朝日新聞デジタルの有料部分は読んでません。

投稿: | 2012年8月12日 (日) 02時58分

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