期待通りの『ドライヴ』
気になっていたニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライヴ』を見た。日経新聞で中条省平氏が、朝日新聞で山根貞男氏が絶賛していたし、公開後はWEBRONZAで藤崎康氏が、「週刊文春」で小林信彦氏が劇場に見に行って気に入ったことを書いていた。
結果は大当たり。期待通り、通好みの映画だった。謎だらけのフィルム・ノワールだが、主人公は爪楊枝をくわえて西部劇の助っ人みたいだし、さそりの白いジャケットはなんだか日本のやくざ映画さえ思い起こさせる。
昼は映画のカー・アクションのスタント、夜は強盗の逃走を助けるドライバーという、ライアン・ゴズリング演じる主人公は、全く正体不明だ。彼が出会うのは、同じアパートの隣人で幼い子供と住む女(キャリー・マリガン)。その女の夫が刑務所から帰ってきて、借金のために盗みを働くのを助けようとして、暗黒世界の巻き込まれる。
男はひたすら車を運転する。銃を持たず、他人に襲われても、素手で殺す。そしてほとんどしゃべらない。女とエレベーターに乗り、位置を変えて女にキスをし、それから殺し屋を足で殺すシーンなど、とにかく殺しのシーンもカー・チェイスのシーンもスタイリッシュで惚れ惚れする。
出てくる脇役たちがみんないい顔をしている。特にギャングの親分のニノなんか、ゴリラのような顔をして、出てくるだけでおかしい。そして突然鳴り出す音楽。なんだか鈴木清順の映画でも見ているように、映画の「型」の美しさが浮かぶ上がる。相手役のキャリー・マリガンが、ただ見ているだけの可愛らしいのも、フィルムノワールというより、やくざ映画風。
監督は1970年生まれのニコラス・ウインディング・レフン。デンマーク生まれだが、明らかにアメリカ映画の伝統を踏まえた、抜群のセンスを持っている。
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