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2012年4月 4日 (水)

『戦争の映画史』の貴重さ

数年前に出た本だが、藤崎康著『戦争の映画史 恐怖と快楽のフィルム学』を読んで貴重な本だと思った。なぜなら、映画の本では珍しく、一般向けに書かれた知的な本だからだ。英語や仏語にはこういう本は多いのだが。一般に映画評論家の本はたわいなく、研究者の本は難しすぎる。

この本は、映画史を通じて戦争と映画の深い関わりを語る。その記述には1本、1本の映画への深い愛情が感じられる。そしてその背景には、ドゥルーズやヴィリリオ、ネグリなどの現代思想家の戦争に対する考察や、9.11以降の戦争報道に対する今日的な分析も感じられ、奥が深い。

映画は生まれて数年後に、米西戦争(1898)、義和団事件(1900)、あるいは日露戦争(04-05)などを映像に残している。本当は実際に撮ったものより、スタジオでの再現映像の方が多かった。決定的だったのは、第一次世界大戦。これは航空機による爆撃を使った初めての戦争で、空撮という技術が生まれた。ウィリアム・ウェルマンの『つばさ』(27)やハワード・ホークスの『暁の偵察』(30)など多くの航空映画が生まれるし(二人とも飛行士出身の映画監督!)、第一次大戦をテーマにした映画は『西部戦線異状なし』(30)や『大いなる幻影』(37)など名作が多い。

それ以上に第一次世界大戦は、初めてのメディア戦争だった。電信電話を駆使し、映画、写真。ラジオ、新聞、ポスター、戦争画などを利用したからだ。「映画は第一次世界大戦によって、いっそう鍛えられ、以後、軍事技術と映画技術は手に手を携えて発展する」。これはテレビでゲームのように見えた湾岸戦争まで続く。

映画と戦争と言えばプロパガンダを考えるが、プロパガンダと娯楽は二律背反ではない。両方とも編集=モンタージュが必要だから。

後半は筆者が好きな戦争映画の解説が続く。戦争がいかに映画のテーマとして向いているかということが、この本を読むとわかる。映画好きは、実は戦争好きなのではないかとさえ思ってしまった。

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