押井守の暴言を楽しむ
アニメ監督の押井守が書いた新書『コミュニケーションは、要らない』にちょっと驚いた。私は「コミュニケーション力」なるものががもてはやされるのが不愉快なので、そのような内容の本かと思ったら、押井の本音トークの暴言集だった。
この本のコミュニケーション云々の部分は、一言で言うと、ツイッターを始めとするネットによるコミュニケーションなんてくだらない、というオヤジ的批判だ。私も同感だが、オヤジの繰り言と見られるから普通は言わない。押井は思ったことをどんどん言ってしまう。
彼はスタジオジブリが自社ビルの社屋に「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画を作りたい」という横断幕をかかげたことを猛烈に批判する。日本に原発を広めたのは読売新聞と日テレを率いた正力松太郎ではないか。紙面やテレビでさんざん応援した。
「読売グループの庇護のもとで成長してきたジブリは、いわばそうした利権の恩恵にあずかって映画を制作してきたのだ。それ自体ははずべきことではないし、それが悪だとは僕は思っていない。恥ずべきは、そういう経緯で映画を作ってきたジブリが、こうした状況になった途端に情動的な原発批判に走り、ああいう横断幕を掲げるということだ」。
これは少し短絡だし、そもそも言わない話だ。ましてアニメの同業者としては。本音トークの行きつく先は、戦後民主主義がいけない、平和憲法がいけない、日本人は明治以降劣化した、日本は核武装すべきだ、となる。極端である。彼は選挙制度さえも否定する。「立候補する者にも、投票する者にも、それなりの資格が問われてしかるべきだと考えているし、極論を言うなら、子供を産むことにだって資格がいるとすら思っている」。
この先は危ない。彼の映画にどうもそうした暴力主義とか選別主義を感じていたが、やっぱりそういう「危ない」人だった。私だってまやかしで成り立つ今の日本の民主主義は吐き気がするが、それは「言わない話」だし、だからと言って選挙制度を止めた方がいいとも思わない。それを極端まで言ってしまったこの本は、だからおもしろい。
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