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2012年4月24日 (火)

政治も社会も描かない『マーガレット・サッチャー』

ようやく映画館で見た『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』が意外におもしろかった。映画としては二流かもしれない。イギリスの政界を彼女がいかにして駆け上がり、首相としてどう活躍したかが見られると思ったが、そんなことはほとんど描かれていない。

この映画には、政治も、社会も、自分の家族さえもきちんと描かれていない。映画で表現されるのは、老いたサッチャーであり、彼女が見る若き日の姿や、夫の幻影だ。すべてが彼女の部屋の中の回想に戻ってゆく。

だからすべては断片だ。最初に下院議員選挙に落ちた時も、保守党党首になった時も、英国初の首相になった時も。首相官邸に入る劇的な瞬間が見せられ、演説があり、拍手がある。彼女を邪魔する男性議員たちも、カリカチュアとしてしか描かれない。

仲良かったはずのレーガンも、同時期のフランス大統領のミッテランも出てこない。あくまで彼女の苦悩と決断、演説、そしてそれらを振り返る老いた現在があるだけだ。

あえてテーマとして浮かび上がるのは、男性社会を生き抜いた女性の姿であり、その後の老いと認知症、そして娘による介護という極めて現代的な問題だ。その扱いはあざといほどうまい。それをメリル・ストリープが出ずっぱりで演じる。いわば彼女の一人芝居で、舞台でも十分に成立しそうだ。

声や話し方、表情がとにかく似ている。80年代に学生時代を送った私にとって、彼女は最も目立つ政治家だった。だから映画を見ながら、懐かしかった。

日本の政治家で彼女のように映画にできるのは、戦後だと田中角栄しかいないだろう。誰か映画にしてくれないかな。たぶん娘の真紀子が許可しないだろうが。

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» 映画:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 The Iron Lady 認知症に苦しむ元首相が回想する1980年代。 [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
11年もの間(1979〜1990年)イギリス初の女性首相を務めた マギー・サッチャーを描く。 まずユニークなのが、あくまでも「現在」を中心に、彼女を描いていること。 認知症に苦しむ日々がベースになっており、「回想」という形で彼女の栄光・挫折が挟み込まれる。 生存...... [続きを読む]

受信: 2012年4月27日 (金) 05時17分

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