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2012年5月27日 (日)

「KATAGAMI Style」?

最初、このアルファベットの展覧会名と聞いた時、全くピンとこなかった。副題は「世界が恋した日本のデザイン」。私はてっきり、三菱一号館美術館はできて間もないのにもうやるものがなくて、習い事の団体の展覧会でも引き受けたのかと勘違いしていた。それが大違い。

今日までの開催だが、これが何ともおもしろい。KATAGAMIとはいわゆる「染めの型紙」で、絹や面に模様を染め付けるための道具だが、この展覧会は、これが19世紀末に欧米に大量に輸出されて20世紀前半の工芸やデザインに影響を与えた軌跡をたどったものだ。

いわゆる「ジャポニスム」は、日本の浮世絵や工芸がフランスを中心として印象派以降の絵画に影響を与えた現象だが、その根底に型紙があったとは知らなかった。1862年のロンドン万博以降、世界を魅了した日本の工芸は、型紙という形で普及する。英国では1884年からリバティ百貨店でステンシル用に販売されていたという。つまり、リバティ模様もそうだし、ウィリアム・モーリスなどのアーツ・アンド・クラフト運動の根底に日本の型紙があったわけだ。

そうやって見ると、ティファニーもミュシャもガレもみんな型紙が下敷きだ。この展覧会は、まず日本の型紙を紹介した後に、英米権、仏語圏、独語圏におけるその影響をたどる。いやいや、目から鱗。

小さいものが多いせいか、イギリス、アメリカ、フランス、ベルギー、ドイツ、オーストリア、オランダなどから集められた展示総数は、450点を越す。ジャポニスム研究に新しい視点を導入する画期的な展覧会であり、それ以上に各地から一点一点を丁寧に集めた力業だ。カタログの巻末には「海外における型紙所蔵先一覧」がある。主要所蔵先では、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館に4500枚、フランスのミュルーズ染色博物館に2000枚、ドイツのドレスデン工芸博物館に16000点、ウィーンのオーストリア工芸博物館に8000点の当時の型紙がある。展覧会チームはそれらを調べ上げたようだ。


今年は安易な「〇〇美術館展」が多いが、数少ないまともな展覧会として、作品のインパクトでは「ジャクソン・ポロック展」だが、視点の斬新さと労力に感嘆したのは、この「KATAGAMI」展。

東京は今日までだが、今後、京都と三重に巡回する。必見。

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コメント

う~ん、三菱一号館を甘く見ていませんか(笑)? やることが無くなるどころか、ドンドン過激になっていくようです・・・。 今年はこの後はバーン=ジョーンズ、シャルダン、クラーク・コレクションと続きます。 さらに浮世絵の展覧会もあるらしいので、期待しましょう・・・。 面白いですよね、この美術館のオーダーは。 「近代」をターゲットにしているようですが、洋の東西を問わず、横切りに「近代」を扱う所は、意外に日本には無いのでは・・・。

投稿: キタガワ | 2012年5月27日 (日) 22時58分

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