とにかく長い映画:『ミステリーズ・オブ・リスボン』
またまた長い映画を見た。4時間27分、ラウル・ルイスの『ミステリーズ・オブ・リスボン』で、この秋に公開されるが、その前に6月のフランス映画祭にも出品される。見終わって、ラウル・ルイスの集大成とでも言うべき傑作だと思った。
去年の8月20日にラウル・ルイスが亡くなった時、日本の新聞はどこも報じなかった。『クリムト』(2006)や『見出された時』(1999)など何本も日本で公開されたのに。
今回の『ミステリーズ・オブ・リスボン』は、その意味でこの特異な巨匠が初めて日本できちんと評価される絶好の機会だと思う。チリ生まれで、フランスに亡命をしてから独特の映画を撮り続けたラウル・ルイス。残した映画は百本を越すという。私はそのうち7、8本しか見ていないが、今回の映画にはそのすべての要素があった。
物語は19世紀前半のポルトガル。孤児院に暮らす14歳のジョアンは、ディニス神父の計らいで、初めて母親アンジェラと面会する。ジョアンのナレーションで語られる物語かと思えば、ディニスが母の半生について語りだす。その中の母の語り。ジョアンの父で母の恋人だった男の話。母と結婚したサンタ・バルバラ侯爵の回想。母は修道院に入り、ジョアンはパリに行く。
後半は、突然ディニス神父の生涯が、サンタ・バルバラ侯爵の死に同席した別の神父が語りだす。貴族の愛人となった青年(別の神父)は、女を連れてベネチアへ向かい、男の子が生まれる。54年前にローマで捨てられたその子供がディニス神父だった。
パリに行ったジョアンはペドロとなってエリーズに恋をする。エリーズはブランシュ夫人とラクローズ将校の娘で、ブランシュはディニス神父がかつて恋をした相手だった。エリーズはかつての愛人アルベルトを忘れらない。アルベルトはリスボンで、サンタ・バルバラ侯爵の召使で愛人だったユージェニアと暮らしている。ジョアンとアルベルトの決闘。そしてジョアンの旅。乞食になった祖父との墓場での出会い。
こう書いているだけで、頭がこんがらがりそうなくらい、物語は入り組んでおり、それを何人もの語り手が語る。すべては、時おり挿入される紙でできた劇場の人形のようだ。虚と実、過去と現在、記憶と真実、話の中の話。まるでボルヘスやガルシア・マルケスの小説のようだ。最後にジョアンの少年時代が再び出てくる。母や神父に囲まれた幻のような風景に、すべては一瞬の夢だったのかと思ってしまう。
あるいはその濃厚な物語性と語りの自由さは、ポルトガルの監督、マノエル・デ・オリヴェイラやジョアン・セーザル・モンテイロにも近い。映画はここまでできるのかと、改めて思った。
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