« またロマンポルノを見る | トップページ | 『あの日あの時 愛の記憶』の一点突破 »

2012年5月25日 (金)

若松孝二の新作は

6月2日に公開される若松孝二監督の新作『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』を試写用DVDで見た。スクリーンで見ていないので、いささか自信はないが、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』に比べると、だいぶ落ちるような気がした。

映画は1960年の浅沼稲次郎刺殺のシーンから始まる。『憂国』の原稿用紙。1966年の早大闘争に始まって、映画は学生運動の高まりをめまぐるしく映し出す。

その時代を見つめる三島と、まわりに集まってくる右翼学生たち。三島のギリシャ宮殿のような洋館で、あるいは自衛隊の御殿場教練所で、そしてサウナで三島と話す学生たち。絶えず当時のニュース映像が挟みこまれる。

見ていて三島の心理がわからない。次第にカリカチュアのようにも見えてくる。『実録・連合赤軍』のように学生たちが行動を起こす過程を描くのではなく、ひたすら三島の周りに集まって話を聞く様子が写される。むしろ合間に挟まれるニュース映像の方に迫力を感じてしまう。

三島がなぜ自衛隊に期待をしたのかわからない。安保闘争を制圧するために自衛隊が活躍し、一挙に軍隊とするという構想が理解しにくい。そうして自らを袋小路に追い込み、自衛隊での自決に向かうという描き方に、どこかシニカルなものを感じてしまう。

『実録・連合赤軍』では、学生運動の軌跡を描き、『キャタピラー』では戦争の欺瞞をいささか図式的だったが見せてくれた。そして今回は学生運動の時代の右翼の側を見せようとしたが、どこか冷めている。これまで以上に歴史的事実を盛り込み、現代史を説明すればするほど、三島が本当に考えたことが見えてこないように思えた。

それでも、三島を演じるARATA改め井浦新の抑えた演技は光る。学生と比べてすこし若いかもしれないが、最後まで落ち着いて、激情を心に秘めた感じがいい。自決の日に車の中で学生たちと「唐獅子牡丹」を歌うシーンの、何とも嬉しそうな顔が心に残る。森田必勝役の満島真之介を始めとする学生たちもリアリティがある。

さてカンヌでの公式上映は今日のはず。日本以上に海外で有名なミシマをめぐる映画だけに、どんな評価を受けるか楽しみだ。

|

« またロマンポルノを見る | トップページ | 『あの日あの時 愛の記憶』の一点突破 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/54793545

この記事へのトラックバック一覧です: 若松孝二の新作は:

« またロマンポルノを見る | トップページ | 『あの日あの時 愛の記憶』の一点突破 »