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2012年5月23日 (水)

『オロ』に「元気をもらう」

6月末公開のドキュメンタリー『オロ』の試写を見た。見たいと思ったのは、岩波映画出身で今年78歳になる岩佐寿弥監督の久々の作品だし、試写状のビジュアルにどこか惹かれたからだ。

見に行って正解だった。最近の言い方で言えば、「元気をもらう」映画だった。

題名の「オロ」とは少年の名前。10歳くらいだろうか、北インドのダラムサラにあるチベット亡命政府のある地区で暮らしている。冒頭、「ヨーイ、スタート」という監督の声がかかる。マイクの前で原稿を読むオロ少年。

映画はダラムサラの毎日を描く。これが思いのほか楽しそうだ。誕生日のパーティや食事、あるいは洗濯のシーン。みんな着るものもきちんと着ているし、ちゃんと食べている。歌を歌ったりして、何より楽しそうだ。

オロが語るこれまでの話。チベットでは学校で中国語の授業で理解できず、亡命を決意した経緯。難民センターやホームの友人が語るそれぞれの亡命の物語。語る内容は悲惨だが、みな表情は明るい。あるいは、2008年の北京オリンピックに対するチベット人の反応を映画に撮ろうとして投獄された監督の妻の話。

後半、監督が画面に出てきてさらに面白くなる。彼はオロを連れて、10年前に撮影したネパールのポカラに行く。そこにはチベットの難民キャンプがあって、モモ・チェンガという名の老婆が監督を抱きかかえるように迎える。その家族に可愛がられ、歌を歌うオロ。別れる前に老婆と手を握り合うオロ。

顔つきは、日本人とほとんど変わらない。難民の生活は厳しいし、みんなチベットに帰ることを望んでいる。しかし彼らの生活は率直な笑いと希望に溢れていて、今の日本人よりずっと人間らしいと思ってしまう。
監督が相手に信頼されながら映画を撮ることで、彼らの日常の奥にある真実が少しずつ浮かび上がり、次第に盛り上がってくる。そしてオロ少年は映画を撮られることで成長してゆく。カメラの前で「スタート!」と声を挙げる嬉しそうな少年の姿が目に焼き付いている。

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