それでもティム・バートン
ティム・バートンの新作『ダーク・シャドウ』は評判が悪い。新聞を見ても、読売は主要3本の中に挙げたが、毎日はやや小さめ、日経はミニ評で、朝日は全く触れていない。それでもティム・バートンだから、と封切り2日目に出かけていった。
冒頭からナレーションで18世紀からのコリンズ家の歴史が滔々と語られる。そして200年後、1972年のアメリカに蘇ったのがジョニー・デップ演じるバンパイヤのバーナバス。一瞬これがジョニー・デップかと驚くような白塗りだが、顔を見ているだけでおかしくなる。
彼がバンパイヤである必然性があるのかわからないほど、全体に間が抜けている。コロンズ家を仕切るエリザベス役のミシェル・ファイファーの不思議な余裕、かつてバーナバスに捨てられ、コロンズ家と敵対するアンジェーリーク(エヴァ・グリーン)の滅茶苦茶ぶり、住み込みの精神科医を演じるヘレナ・ボナム=カーターのおかしさ(いる意味さえわからない)など、出てくるたびに笑ってしまう。そして凝りに凝ったゴシックの豪邸に、彼らの派手派手の衣装。
コリンズ家の子供たちは、なぜか『ヒューゴの不思議な冒険』の2人。特にラストにバンパイヤになってしまうクロエ・グレース・モリッツのふざけた切れ具合がたまらない。カーペンターズのヒット曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」を放映中のテレビをジョニー・デップが覗き込み、「この箱は何だ」と言うと、クロエは「バカじゃないの」。彼女がパーティならアリス・クーパーを呼んで欲しいというと、本物が来てしまう。
映画の最後に「ダン・カーティスに捧げる」と出てくる。60年代末から70年代にかけて流行ったテレビシリーズ「ダーク・シャドウ」のディレクターtらしい。いかにもそういう下敷きがありそうな映画だった。それらを見ていたらもっとおもしろかっただろうが、私は十分楽しめた。ラストの謎のショットもいい。
そういえば、新聞はどこも『ファミリー・ツリー』を大きく取り上げていた。私にはいやな感じの保守的、懐古的な思想に裏付けられた、ハワイの観光映画にしか見えなかったが。
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