高度成長からバブルをたどる2冊
偶然続けて読んだ本で、自分が生まれてから育った時代、つまり高度成長からバブルをたどることになった。吉川洋著『高度成長 日本を変えた6000日』と奥田英朗著『東京物語』。前者は経済書で、後者は小説だが。
『高度成長』は1953年、朝鮮戦争が終わった頃から、1970年の大阪万博頃までを描く。およそ20年間、経済成長は毎年平均で10%。まさに未曽有の成長で「今では高度成長以前の日本がどのような国であったか、想像することすら難しい」。
1950年、第一次産業従事者は48%。1970年は、19%。ほぼこの数字ですべてがわかる。「古い伝統を生活の隅々に残し、半自給自足的な社会にあった農村に、働く日本人の2人に1人、子供や年寄りを入れた総人口でいえば半数以上の日本人が暮らしていた」「高度成長がもたらした変化に比べれば、70年代以降の変化ははるかに小さい」。
1950年頃に田沼武能が撮った写真《渋谷駅前広場》がある。広場の先に見えるのは、無数の「掘っ立て小屋」だ(ケープタウンの空港から都心に向かう道で見た)。そして1962年の集団就職に始まる「民族大移動」。宮城県の上沼中学を1963年に出て、東京に集団就職した中卒の生徒たちを10年間追いかけた表があった。『週刊新潮』に載ったものだが、いわゆる「金の卵」たちが職を転々と変えてゆく姿が浮かび上がる。
そして日本はもう戻れないところまで来てしまった。『東京物語』で描かれるのは、1978年に18歳で名古屋から上京して、大学を中退してコピーライターとして生きる10年余りを描く。もはや努力をしなくても、なんとなく食べていける安易な世代の姿が浮かび上がる。まさに自分の世代なので、すべてが甘酸っぱい。
ウォークマン、YMO、松田聖子、サーファールック、かい人20面相、松田優作の「なんだこりゃー」、有楽町マリオン等々。
そうしてそれから日本はどんどん暗くなった。バブル崩壊、関西大地震とオウム、9.11から3.11まで。半分は我々の責任だ。
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