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2012年5月31日 (木)

またまたロマンポルノ

ふと午後に空いた時間ができたら、またロマンポルノを見たくなって、渋谷に出かけた。昨日見たのは、小沼勝監督『さすらいの恋人 眩暈』(78)と曾根中生監督『新宿乱れ街 いくまで待って』の2本。先日見た2本が時代物だったのに比べて今回の2本は現代物で、70年代後半の東京が出てくる。

『さすらいの恋人 眩暈』は、凍る池の中に飛び込む女とそれを助ける男の出会いから始まる。女はスーパーに勤めているが、男は友人のお金を使いこんで逃げ回っている。最初は大げさなくさい芝居にうんざりしていたが、この男女が人前で本番をやる白黒ショーの後に中島みゆきの「わかれうた」が流れ出したあたりから、引き込まれていった。

追ってから逃げる2人は安アパートを転々としながら、ホテルで白黒ショーをやる。渋谷駅南口、道玄坂(『柳生一族の陰謀』のポスターが見える)、晴海埠頭、ニコライ堂などの切り取られた風景がいい。白黒ショーを真面目に見る中年たちの真面目な顔つきがおかしいし、何より小川恵の、いかにも田舎から出てきたような貧相な表情や体つきが哀しい。2人が世の中から逃げながら、その隅っこで力強く生きる姿が浮かび上がる。いつも逃げる感じは、内ゲバの時代の余韻か。

『新宿乱れ街 いくまで待って』は、ゴールデン街に生きる人々を描いたものだ。こちらの方が映像や音は才気ばしっている。ゴールデン街のバーに勤める女が、脚本家を目指す男を養っている。ゴールデン街にはいかにもの人びとが揃っている。バーで「場違いなインテリ」として内田裕也がゴールデン街文化論を一発ぶって、まわりに嫌がられるのがおかしい。

こちらに流れるのは、ジュリーの「時の過ぎ行くままに」や「勝手にしやがれ」、それから河島英五の「酒と泪と男と女」。男は女がいびきをかいているのを録音して聞かせたり、ラストは女優になる女が勤めていたバーで全裸になったりと何でもありだが、夢があった頃のゴールデン街をきちりと描いている。

2本を見ながら、ポルノというより、政治の時代の後の70年代後半の空虚さが迫ってきた。

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