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2012年5月 9日 (水)

『桐島、部活やめるってよ』の不穏さ

8月11日公開のこの映画の試写状をもらった時から、不穏な感じはしていた。実を言うと、同名のベストセラー小説があることさえ知らなかったが、題名とビジュアルから、何か普通の邦画とは違うものが伝わってきたので、早めに見に行った。

結果は予想通り、問題作だった。あるいは、問題さえ見つからない変な作品だった。映画は金曜日から火曜日までのある高校を描く。それも授業ではなく、放課後のだらだらした時間を。

金曜日の同じ時間が異なる視点から4回も繰り返され、どうも桐島がいなくなったことが問題らしいことがわかる。異なる視点といってもガス・ヴァン・サントの『エレファント』のように、一人づつの視点から、端正にまとめられたものではない。むしろ現実が微妙にずれてゆく感じ。登場人物もやたらに多い。

それから、桐島の不在を背景に、土、日、月と数人の高校生たちの日常が描かれる。桐島の所属するバレー部の試合、映画部の撮影、吹奏楽部やバトミントン部。中心人物を欠いた高校生たちの隙間を、空虚な時間が流れてゆく。

最後は火曜日が2回見せられる。吹奏楽部はワーグナーの「ローエングリン」を演奏し、映画部はゾンビ映画を撮り始める。そこに桐島を探す高校生たちがぶつかる。情熱とはほど遠い、透明で不可思議なカオスが広がる。

高校生間の優しく残酷な言葉のやりとりを見ているうちに、私が日頃大学生たちに感じる雰囲気とそっくりだと思った。携帯とメールやネットでつながる今の若者の恐ろしいほどの心理戦を、それにふさわしい映像言語で語った怪作だ。

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第22回小説すばる新人賞受賞の同名ベストセラー小説を、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で数々の賞を受賞した吉田大八監督が、神木隆之介×吉田大八×朝井リョウで映画化した注目の青春映画。本作『桐島、部活やめるってよ』の完成披露試写会に10組20名様をご招待します。 応募締め切り 6月18日(月)... [続きを読む]

受信: 2012年6月11日 (月) 22時18分

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