モナ・リザがいっぱい
妙な展覧会を見た。渋谷の東急文化村で6月10日まで開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」展。ダ・ヴィンチ(欧米ではレオナルドと呼ぶが)の絵は、10数点しかないこともあって、まず日本に来ない。数年前にウフィッツィの《受胎告知》が日本に来た時は、東京国立博物館で1点だけを特別展示したくらいだ。
今回でダ・ヴィンチの真筆と言えるのはデッサン2点のみで、それらは別にどうということはない。おもしろいのは、ダ・ヴィンチが弟子と描いたと想定される絵や、ダ・ヴィンチの影響を受けて描かれた絵が見られることだ。
なかでも、ルーヴル美術館の《モナ・リザ》をめぐる作品群が勢揃いしている。一言で言うと、「モナ・リザのそっくりさん」がいくつも並んでいて、気持ち悪くなりそうだ。若くてちょっと隠微な《アイルワースのモナリザ》を始めとして、ちょっと老けたモナ・リザとか、意地悪なモナ・リザとか、太ったモナリザとか。版画を入れると10点以上ある。
さらにのけぞったのは、次の「裸のモナ・リザ」シリーズ。おっぱいを出したモナ・リザが並んでいる。なぜかどれも腕が妙に太く、その割に胸があまり大きくないのでどこか男性的だ。あまり女性的に描くとエロチックになり過ぎると心配したのかどうかわからないが、カタログにも両性具有をモチーフにしたのではと書かれていた。こちらも版画を入れると10点ほど。こりゃ変だ。
それからルーヴルにある、私の好きな絵のそっくりさんもあった。裸の女性が2人いて、1人がもう一人の乳首をつまんでいるフォンテーヌブロー派の絵だ。今回展示しているのでは2人が指を絡ませているだけだが、やはりエロチック。
もともとモナ・リザ自体が美しいのかどうか私にはよくわからないが、少なくともヨーロッパでは美の基本として崇められ、追随する画家が絶えなかったことは間違いない。やっぱり妙なものを見た気分だ。美は普遍ではない。
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