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2012年6月18日 (月)

キッカワレイカとは?

吉川霊華という画家の名前はどこかで聞いたことがあったが、全くノーマークでキッカワレイカという読み方も知らなかった。竹橋の東京国立近代美術館で7月29日まで開催の「吉川霊華展」を見に行ったのは、チラシに惹かれたからだ。

副題は「近代に生まれた線の探究者」で、チラシの解説文は「吉川霊華といってもほとんどの人はご存じないかもしれません」と始まる。こんな宣伝文はないだろう。A4を縦につなげたチラシの裏は、真っ黒に金で書いた縦長の線画が強烈な印象を残す。

明治8(1875)年に生まれ、昭和4(1929)年に亡くなった日本画家だが(ちなみに男性)、その描く世界は独特だ。まず中国の詩や説話、それから日本の和歌と古典、そして仏教の世界。リアルな日常を描いた絵は一枚もない。すべて、過去の物語の世界だ。

それを恐るべき繊細な線画で描く。例えば《離騒》という1926年の絵の左側には、波の中を龍が歩き、海岸に岩が並び、手前の砂浜を馬2頭と歩く人がいる。右側には波の中に龍に導かれる天女と侍女2人。すべてが等価の線で描かれているので、どこまでが波でどこまでが龍かはっきりしない。解説によれば屈原の詩から着想を得たという。

後半には絵の中に和歌などの文字が氾濫する。流麗過ぎて一字も読めないが、線画と調和した空間を作っていて、見ているだけで快感が走る。

明治以降、日本が近代化に向かう過程に生きながら、現在に一切背を向けて、過去の世界を耽美に描く。一体どんな人か顔を見たかったが、顔写真は会場のどこにもなかった。先日の高橋由一といい、日本美術史は奥が深いと思うこの頃だ。

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