「幸福の科学」の映画を見る
初めて、「製作総指揮 大川隆法」の映画を見た。『ファイナル・ジャッジメント』という題で、日本がアジアの大国オウランに占領される近未来を描いたもの。見たのは、教えている学生が出演していており、「見てください」とチケットをもらったから。教師は大変だ。
結論から言うと、思ったほどひどくはなかった。前半、渋谷がオウランの軍用ヘリで埋め尽くされ、日本が占領されて戒厳令が布かれるところまでは、それなりにおもしろかった。中盤、主人公が光り輝く森の中で宗教に目覚めるあたりからはあまりにも雑な構成について行けなくなったが、昔の『日本沈没』とか『ノストラダムスの大予言』でもこのレベルだったと思う。
最近は邦画のレベルが全体に上がっているが、『アマルフィ』も『テルマエ・ロマエ』も、現代の日本の観客に受ける要素はきちんと組み込まれているとは言え、映画のレベルとしては、これより少しいいいくらいか。
それより驚いたのは、オウランが明らかに中国を指していることだった。終盤、渋谷のビルは「人民解放軍」とか「文化大革命」などの中国文字に覆われる(なぜか「天津甘栗」も)。赤を基調とした旗なども中国に近い。先日読んだ『陰謀史観』や『ネットと愛国』ではないが、明らかに中国を仮想敵国と考えた陰謀史観を煽る映画だ。
その反面、映画自体に布教的要素はない。最後の主人公による宗教的な訴えも、極めて一般的で、ちょっと期待外れだった。オウラン人共和国トップは宍戸錠が演じているが、白人風でラングのサイレント映画『ドクトル・マブゼ』を思わせる。
見たのは新宿ミラノ1。歌舞伎町の千人を超すキャパの大劇場だが、客は百人ほど。今どき珍しい全席自由席で嬉しい。信者は半分もいない感じ。入口でチラシを配るとか布教活動もあるかと期待したが、何もなかった。配給は日活で、制作プロダクションは子会社のジャンゴフィルム。道理でちゃんとできている。
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