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2012年6月21日 (木)

戦後史を読む:『日中国交正常化』

去年話題になった、服部龍二著の新書『日中国交正常化』をようやく読んだ。50歳を過ぎて、自分がこれまで生きてきた時代を振り返るために、戦後史を語る本を最近よく読む。この本は「田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦」が副題で、1972年の日中交渉の過程を描く。

この本を書くにあたって著者が取った方法は、情報公開請求で外務省の公式記録を入手し、存命の当事者に聞き取りを行うというものだ。当時現場のキャップだった首席事務官といった面々が今や70代半ばなので、しばらくすると、インタビューも難しくなる。その意味で、聞き取りによる現代史執筆というのは、とりわけ外交のように非公開の部分が多い分野では大きな意味があることだと思った。

おもしろいのは、9月25日からの北京での田中首相、大平外相の交渉を細かく再現した部分だ。初日の歓迎夕食会で田中の「わが国が中国国民に多大なご迷惑をおかけしたことについて、私は改めて深い反省の念を表明する者であります」という発言に中国側は凍りつく。私には普通に見えるが、中国側には「ご迷惑」がいかにも軽すぎたらしい。著者は、このスピーチを中国語に訳した通訳にまで取材している。

翌日、周恩来は「ご迷惑」発言の訂正を求める。青くなる大平外相。田中自身が言葉が足りなかったことを意を尽くして説明する。こんな具合で台湾の扱い問題、戦争賠償などをめぐって、丁丁発止が6日間続く。

外交とはこんなにスリリングなものだと初めて知ったが、全体に少し劇画調というか、田中たちを英雄化しすぎている気もした。前年にニクソンが訪中をし(いわゆるニクソン・ショック)、国連が中国代表権を台湾から中国に変えた以上、日本の国交回復は時間の問題だった。誰が首相だってできていたような気もする。

むしろ驚いたのは、周恩来や毛沢東の紳士的な大人の対応だ。今の中国の政治家には全く見えない気品を感じた。

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