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2012年6月13日 (水)

極限状態のドイツ映画:『ソハの地下水道』

ドイツ映画には、極限状態を描いた歴史物の秀作が多い。最近だと『善き人のためのソナタ』とか『ヒトラー 最後の12日間』、『アイガー北壁』、『トンネル』など思い出す。一見地味な内容だが、見ているとだんだん盛り上がってゆく。

9月22日に公開されるアグネシュカ・ホランド監督の新作『ソハの地下水道』もそんな系譜に連なるだろう。とにかく、ナチスを逃れて地下の下水道に14ヶ月も隠れ住んだユダヤ人たちの話だ。悪臭漂う下水が流れるそばをネズミが動き回る、そんな真っ暗な空間で続く2時間半の映画と聞いただけで、普通は見たくないと思うだろう。

ところが、1時間を過ぎたあたりからだんだん手に汗を握るようになってくる。構成がうまいからだろう。主人公のソハは下水道技師だが、コソ泥もやるいい加減な男だ。彼がユダヤ人の逃亡を偶然手助けしてお金をせしめたことから、物語は展開する。

地下のシーンに時おり挟み込まれる地上のシーンがうまい。ソハの自宅の妻や娘とのやり取り、旧知の軍人との駆け引き、ユダヤ人収容所に恋人の妹を探しに行く男ムンデクの話、ムンデクとソハがドイツ兵を殺したことで殺された10人のポーランド人のなかにソハの元相棒がいたこと、「教授」が墓地に隠した宝石を取りにいく話等々、いくつものエピソードが重なる。時おり地下から見る地上のまぶしさが何ともリアルだ。

そして最後、ソハは娘の聖体拝領式を抜け出して、大雨の中をユダヤ人を救いに行く。その場面の迫力と愛すべきソハの情熱に、実はこの映画はエンタメの要素がたっぷりあるんだと悟る。

「騙されたと思って見てごらん」と勧める映画の典型だろう。

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» アグニェシュカ・ホランド監督インタビュー:映画「ソハの地下水道」について【1/2】 [INTRO]
現在公開中の『地下水道のソハ』は、1943年ナチス政権下のポーランドで、地下水路にユダヤ人をかくまった男の姿を、実話に基づいて描いた驚くべき物語だ。本作のメガホンを取ったアグニェシュカ・ホランド監督が来日した際にお話を伺った。【Page1/2】... [続きを読む]

受信: 2012年9月23日 (日) 21時25分

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