高松:うどんの後の「村山知義の宇宙」展
高松でもう一つ見た美術展があった。高松市美術館の『村山知義の宇宙 すべての僕が沸騰する』展。これは葉山でやっていたし、もうすぐ世田谷美術館に来ると知っていたが、「かな泉」といううどん屋の隣だったので、食後の散歩で見た。
村山知義といえば、20世紀初頭のベルリンに学び、東近美にある《コンストルクチオン》(25)というカッコいい絵を描いたり、「マヴォ」という雑誌を作っていたくらいしか知らなかった。この展覧会は、その彼の全貌を見せるもので、なかなかの力業だ。
特に彼が舞台美術やグラフィックデザインで多くの仕事を残しているのには驚いた。ロシア構成主義の影響の色濃い雑誌の表紙の数々は、何ともモダンだ。舞台も、有名な『朝から夜中まで』を始めとして、多くの写真が並んでいる。「マヴォ理髪店」や「山の手美容院」の外観をデザインしている写真もあった。
絵画も現物が存在せず、雑誌の写真を載せているものが多い。その意味で美術展というより、資料展に近いが、それはそれでおもしろい。子供向けの絵本が多いのにも驚いた。
20歳で東大哲学科に入学するが、年末に退学して、1922年、21歳でベルリンに行く。一年後に帰国して、絵画、舞台、ダンス、デザインなどでヨーロッパの前衛芸術を広めた。戦時中は左翼演劇に関わったとして2年間検挙されている。戦後も劇作家、演出家、舞台装置家として活躍していたとは知らなかった。亡くなったのは1977年、76歳の時だ。私はてっきり戦前の人だと勘違いしていた。
香川は、丸亀といい、高松といい、直島や豊島といい、ずいぶん現代美術に熱心だ。そういえば、帰りの羽田からのモノレールに「うどん県。それだけじゃない香川県。アート県」という広告があった。思わず、そうかもしれない、と広告に乗せられてしまった気分。
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