映画好きが作った映画『夜が終わる場所』
9月22日に公開される『夜が終わる場所』を見た。映画美学校出身の宮崎大祐監督の長編第一作。普通新人の映画は見ないが、試写の案内が2度もメールで来たし、黒沢清や万田邦敏監督らの助監督をしていたという経歴や外国の映画祭での受賞歴にも心が動いた。
結果は予想通りというか、いかにも映画好きが作った映画だった。殺し屋に自分の両親を殺された男が成人して殺し屋になるという話で、理由もなければ結論もない。もちろん状況の説明も、心理の描写もない。冒頭のオモチャのような銃で殺すシーンに始まって、「型」としての殺しが次々と続く。10年後とか15年後という設定も「型」でしかない。
フィルムノワール自体、ある意味で「映画の映画」だが、それがゴダールや黒沢清など何人も経由して、残った「型」だけを必死で集めて両手で支えたような映画だ。ロケ地も入念に選ばれているし、印象的なカットもあるし、俳優も悪くないが、見ていて何の感動もない。おかしくもない。ひたすら作り手の映画への思いだけが残る。
これを今の映画館で見せるのは、ちょっときついだろう。もっとも黒沢清だって青山真治だって、周防正行だって、昔はみんな過去の映画の引用ばかりの映画を作っていた。しかし時代が違う。たぶん才能のある監督なので、この作品をきっかけに、次は予算が増えてまともな脚本で撮ることができたらと思う。
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