手の込んだ作りの『崖っぷちの男』
小さい頃から高いところは苦手だ。映画でさえも、高層ビルから見下ろす場面などは見ていると足のあたりがヒヤリとする。だから『崖っぷちの男』の予告編を見た時は、見ないつもりだった。ところが金曜の夕刊各紙で絶賛されていたので、見に行ってしまった。
何と、最初から最後まで高層ホテルの窓の外に立つ男の話だった。見終わって、高所恐怖は日常化するとあまり怖くなくなるものだと思った。それ以上に、予想以上に手の込んだ映画の作りに思わず熱中してしまった。
ホテルの21階の部屋の外に立つ男は、脱獄囚。元警官で、巨大なダイヤを盗んだ容疑がかけられていた。そのホテルを所有する宝石王が、その時間に隣のビルに現れる。一方で若い男女がそのビルに侵入を試みる。後半、実はすべては脱獄班の策略で、警察やホテルの従業員の中にも敵と味方がいて、という展開になる。ニューヨークのど真ん中で野次馬が集まり、テレビが生中継をする。衆人環視の劇場型映画というべきか。
主人公のサム・ワーシントンや彼と交渉する女性警察官のエリザベス・バンクスなど俳優の魅力が際立っている。とりわけ宝石王を演じるエド・ハリスは、出てくるだけで嬉しくなる。
高層ビルの外に出て交渉を始めたら、降参して部屋に戻るか、落ちて死ぬか、あるいは助かるかしかないはずだが、そのどれでもない方向に映画は展開する。後から考えるとダイヤを盗む若い男女の設定など少し詰めが甘いところもあるが、とにかく1時間42分、手に汗握る展開だ。
公開2日目の日曜4時20分の回だったが、500人の丸の内ルーブルは1割くらいしか埋まっていない。前にここで、公開2日目の『アメイジング・スパイダーマン』がガラガラだったことを書いたが(これもマリオン)、興収は30億円は越すらしい(前の3部作の半分以下だが)。有楽町マリオンは、若い人向けの映画は入らないのかもしれない。丸の内ルーブルは、いまだにネット予約もできないし。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『心と体と』の夢と現実(2018.04.24)
- 『ファントム・スレッド』に酔う(2018.04.22)
- 『ワンダーストラック』をまた見る(2018.04.20)
- カンヌに出る日本映画について(2018.04.17)
- 『男と女、モントーク岬で』のシュレンドルフ(2018.04.18)
コメント
私も予告編を見た時は、全く関心がなかったのですが、なんとなく観に行ったら、すごく楽しい作品ではありませんか。最初から緊迫感でハラハラドキドキ。予想もしなかった展開に釘ずけになりました。途中で、同僚のこの2人がクサイ。というのはわかってしまいますが、最後まで何故ホテルのおじさんが協力者なのか分からず、ラストで正体が明かされ、あぁ、そうか~。気分爽快。足取り軽く映画館をあとにしました。前日スノーホワイトを見て、少し納得できない気分だったのですが、崖っぷちがそんな気分を吹き飛ばしてくれました。スノーホワイトは、衣装や映像はなかなかのものですが、企画として新鮮味がありません。最近この様にヒロインがやたらと闘う映画が多く、途中からはバイオハザードを観ている様な気分になってしまいます。
投稿: sona | 2012年7月15日 (日) 11時32分