5時間半の『カルロス』
最近、長い洋画が立て続けに封切られる。公開が始まったイタリア映画『ジョルダーニ家の人々』は、6時間39分、この秋(9月?)公開のラウル・ルイス監督『ミステリーズ 運命のリスボン』は4時間27分。今回見たのは9月1日公開のオリヴィエ・アサイヤス監督『カルロス』で5時間40分。
3本は内容も演出も共通点はないが、どれも数十年の歴史を語っている。やはりこれだけの長い時間見ると、数十年の歴史が身体的にも伝わってくる感じ。
『カルロス』は1970年代から90年代までのテロを描いたという点では、『ジョルダーニ家の人々』のスタッフの前作『輝ける青春』(6時間6分)と重なる。ただこの4本の中で、『カルロス』のみは、カルロスという名の一人のテロリストを全編描いている点で異なる。
カルロスはベネズエラ出身で、1973年からパレスチナ解放戦線に近づき、パリを拠点にテロを展開する。1974年、日本赤軍によるオランダ・ハーグの日本大使館襲撃を応援したり、翌年ウィーンの石油輸出国機構(OPEC)の会議を襲撃して各国閣僚を人質に取ったり。
全体は3部構成で、2部がOPECの襲撃をたっぷり見せ、その後東独やシリアに近づいていく様子が描かれる。3部はハンガリーからリビア、南イエメン、シリアなど、カルロスを使おうとする国々を放浪するさまが描かれる。ベルリンの壁が壊されて冷戦が終結すると、カルロスはどこの国からも入国を拒否される。
カルロスを演じるエドガー・ラミレスが抜群にいい。20年間、欧州や中東を目まぐるしく動き回り、見た目も雰囲気も変貌してゆく。撮影された各地もその土地の匂いが漂うような場所が選ばれ、ほかの登場人物もいかにも現地の人々だ。どんな言葉も誤魔化さずに原語が使われる。
映画はカルロスに同情もしないが、冷淡に扱うわけでもない。時代と場所の細部がしっかりと描き込みながら、70年代から90年代にかけての冷戦と中東問題の展開をじっくり見せる。久しぶりに映画を見て、「歴史」を感じさせた傑作だ。
そういえば、これもテレビ用に作ったものだという。ヨーロッパには、作家性の強い監督にテレビの連続ドラマを作らせるパターンがあるようだ。日本でWOWOWが最近黒沢清に作らせたようなものか。
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